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症例蓄積から学んだ自家がんワクチンの適応

大野忠夫
セルメディシン株式会社

 自家がんワクチンは、演者が理化学研究所時代に開発、2001年に起業して2002年から自由診療ベースにて提供している未承認医薬品である。そのためであろう、患者さんから自家がんワクチン療法の受診希望を聞いた主治医の第一声は、「自家がんワクチン?!そんなものにエビデンスはあるのか?」が普通である。しかし、当社に問い合わせをしてくる患者さんの第一声は、「その治療法は私に効くんですか?」である。この差は、医師と患者の立場の違いを最も鮮明に表しているが、EBM(evidence-based medicine)は統計処理をされた結果によるものであって、個別患者の事情・個体差は無視される(良くても共通特徴を持つ患者集団内のバラツキとして扱われる)。しかも統計学的にはp=0.05という、慣習的に設定された巨大な壁を乗り越えなければならない。
 そこで演者は、「成功確率は低くても、個別症例で少しでも有効なら、治療法として採用してもよいのではないか」というスタンスで、これまでがんワクチン療法に関心のある医師の協力を得て自家がんワクチンを提供してきた。
 2013年10月1日に累積2000例を達成したが、この中には、驚く程の効果を示している症例がある。肺がん、脳腫瘍、大腸がん、膵がん、胃がん、骨肉腫、乳がんの症例を1例ずつ紹介したい。そこから学んだ経験では、驚愕症例では術後に(初発であれ、再発・転移であれ)、
  ・大型の腫瘍塊は残っていない
  ・なんらかの前治療/同時併用治療がある
  ・画像上で認められる転移・再発発見前に自家がんワクチンを投与している
というものであった。そこから導きだされた自家がんワクチンの適応は、意外に平凡だが、
  ・「大型がんが残っていては、自家がんワクチン療法はかなわない」
  ・「放射線・抗がん剤治療の併用は忌避すべきではない」
  ・「がんの進行が比較的遅いのが好適な治療対象だ」
ということになる。
 1個にしか見えないがん組織であっても、遺伝子的にはすでに多数の変異が生じており、一枚岩ではないことが判明している。本邦では単純で合成可能ながん抗原ペプチドによるワクチン療法が開発されつつあるが、既知も未知も含めて多種多様な遺伝子変異に対応したがん抗原を提供できるのは、患者本人のがん組織以外にはありえない。しかしながら、個々人の手術摘出がん組織量には限界があり、自家がんワクチンでは、がんペプチドワクチンのように多数回投与可能な量を作製することは困難である。
 そこで、どのような解決策があるか、考察を交えて、本研究会ご参加の皆様と議論させていただければ幸いである。