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免疫チェックポイント阻害剤・抗PD-L1抗体に比べ、より有効な対抗馬が早くも登場

最新の学会/最新の論文から

9月17日に発信されたASCOからのニュース(*)で、免疫チェックポイント阻害剤として使用される抗体(最新の臨床開発薬の一つが抗PD-L1抗体です)よりも、抗体の代わりになる結合能を有する小さなタンパクを設計して投与した方ががん治療効果が高い、という学会発表があったそうです。

ニュース(*)は、
“Preclinical Study Shows Small-Protein Immunotherapeutic May Have More Antitumor Activity Than Conventional Antibodies”

→ http://www.ascopost.com/ViewNews.aspx?nid=32846&utm_medium=Email&utm_source=ExactTarget&utm_campaign=&utm_term=4536237

です。

学会は、
CRI-CIMT-EATI-AACR – The Inaugural International Cancer Immunotherapy Conference:
Translating Science into Survival
September 16 – 19, 2015 , Sheraton New York Times Square Hotel , New York, NY

ニュース(*)のもととなった演題は、
→ http://www.aacr.org/Documents/IMM15_PosterB_WEB_v2.pdf
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B101  Engineered PD-1 variants as immunotherapies for cancer. Sydney R Gordon, Roy Maute, Aaron Mayer, Melissa McCracken, Arutselvan Natarajan, Nan Guo, Richard Kimura, Jonathan M Tsai, Aashish Manglik, Andrew Kruse, Sanjiv Gambhir, Irving L Weissman, Aaron M Ring.
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です。

まだマウス実験段階ですが、要点は、免疫チェックポイントの鍵となっているPD-1タンパク(T細胞側にある)が結合する相手方、PD-L1(がん細胞側にある)に結合する小型タンパクをdirected evolution法で選別し、抗PD-L1抗体類似の拮抗剤にしてしまった点です。

小型タンパクは抗体の1/10の大きさで、PD-1タンパクに比べ、PD-L1に対して5万倍の結合能を示し、PD-1~PD-L1結合を強く阻害するため、キラーT細胞の増殖にブレーキをかけるシグナルがストップし、キラーT細胞がよく増殖するようになります。

しかも、抗PD-L1抗体が入り込めない腫瘍の中にまで小型タンパクは入り込めるため、マウスでは大型の腫瘍といえるエンドウ豆サイズの移植がん(150 mm^3)にも有効となる能力があるとのことです。

演者らはまだスタンフォード大の大学院生ですが、すでにベンチャー企業を起こしており、同一の考え方で抗体医薬に代わる小型タンパク群を世に出してくると思われます。

イノベーションのスピードは日本にいる我々の予想以上に早まっていますね。