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乳がんネオアジュバント療法の成否も免疫反応次第です

最新の学会/最新の論文から

2015.03.09に、米国臨床腫瘍学会から、「免疫的な因子が、カルボプラチンを使う乳がんネオアジュバント療法で病理学的完全寛解(pCR)となるか否かを予測する」というニュースが流されました。
→ The ASCO POST, MONDAY, MARCH 9, 2015
Immunologic Factors Predict Pathologic Complete Response to
Neoadjuvant Therapy With or Without Carboplatin in Breast Cancer.

これは、2014.12.22にオンラインで発表されていたGeparSixto試験の論文(Ref.1)についてコメントしたものです。

乳がんネオアジュバント療法では、抗がん剤としてアンスラサイクリン、タキサン、カルボプラチンを使用しますが、Ref. 1の論文では標準療法であるアントラサイクリン/タキサンベースレジメンに追加するカルボプラチンの有無とpCRとの関係を、免疫反応に関係するmRNA発現レベルで詳細に解析しています。

その結果、HER2(+)乳がん症例では、乳がん中への浸潤リンパ球(TIL)が多い方がカルボプラチンを使用したときにpCRになる(P < 0.007)、トリプルネガティブ乳がんでは有意な関係はない、というものでした。

乳がんネオアジュバント療法では、「抗がん剤で直接乳がん細胞を殺せるから乳がんを治せるのだ(この場合はpCRに至るの意味で)」というのは、実は単なる思い込みではないでしょうか。

なんのことはない、ネオアジュバント療法の実態は、乳がん中にTILが大量に入り込んでいる場合、抗がん剤で弱ったがん細胞をTILが容易に殺せるからpCRに至るのであって、ネオアジュバント療法とは、体内で起こっている自然な細胞性がん免疫反応の補助療法になっているにすぎないのです。

強烈な抗がん剤治療で、がん組織中のTILまでがん細胞と一緒に殺してしまっては、(抗がん剤抵抗性のがん幹細胞が生残するため)結局、抗がん剤治療では治癒にいたることはないというは、このような理由によると考えられます。

また、同じ理由で「低用量抗がん剤治療はがん免疫療法との相性が良い」というのも理解できると思います。


Reference

1. Denkert C, et al.:Tumor-Infiltrating Lymphocytes and Response to
Neoadjuvant Chemotherapy With or Without Carboplatin
in Human Epidermal Growth Factor Receptor 2-Positive
and Triple-Negative Primary Breast Cancers. J Clin Oncol, Published
Ahead of Print on December 22, 2014 as 10.1200/JCO.2014.58.1967