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ASCO2015のホットな話題から:体細胞遺伝子変異の閾値を越えたミスマッチ修復欠損大腸がんでは、免疫チェックポイント阻害剤は良く効く

最新の学会/最新の論文から

先週開催され、世界中のがん治療者を興奮させたASCO2015(2015.05.29-06.02)で、大きな話題となったのが、「免疫チェックポイント阻害剤・ニボルマブは大腸がんに効かない」というASCO2014時点の概念を、たった1年でひっくり返した「大腸がんでミスマッチ修復欠損のある症例ではペンブロリズマブが非常に良く効く」というD.T. Le(Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center)の講演でした。

ニボルマブ(オプジーボ)もペンブロリズマブ(キートルーダ)も同じくリンパ球上のPD-1分子に結合する抗体です。キラーT細胞の表面に出ているPD-1分子に、がん細胞表面にあるPD-L1分子が結合すると、キラーT細胞の増殖活性化にブレーキがかかり、がん細胞が殺されずに生き延びてしまいます。

しかし、抗PD-1抗体によって、PD-1~PD-L1間の結合が邪魔されるとブレーキがかからなくなり、キラーT細胞がどんどん増殖しつつがん細胞を殺していく、だから抗PD-1抗体は良く効くというメカニズムです。

昨年までは、メラノーマや腎がんではこのメカニズムが有効に働くが、大腸がんでは働かない(何故かは不明)ため抗PD-1抗体が効かないのだ、とされていました。

ところが、Leの講演では、DNAのミスマッチ修復(mismatch repair, MMR)能力が欠損している大腸がん細胞ががんの主体を占める症例では奏効率が62%もあったというのです。しかも、MMR能が高い大腸がん症例では奏効率が0%、MMR能が欠損している他のがんでは奏効率が60%もあると発表していました。

(この発表の前日に、論文がNew Eng J Medに出た、というのですから、あまりにもタイミングが良すぎてびっくりです。→ Ref. 1)

この解説が、ASCO2015内で毎日発行される新聞ASCO Daily News, May 31, 2015版に出ています(Ref. 2)。

上記の効果の要点は、高度の遺伝子変異が生じていてそれを修復できないがん細胞は、免疫細胞に攻撃されやすいからだ、というものです。実際に、講演でLeは、whole-exome sequencingによって、MMR欠損がん細胞では、1個あたり平均1700個の体細胞遺伝子変異を負っているが、MMR能が高いがん細胞では体細胞遺伝子変異は平均70個に過ぎないと発表しました。

この結果をもとにさらに大規模なMMR欠損がんの臨床試験に入るそうです。

Discassantに指名されたN. H. Segal(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)の発表は、1個のがん細胞に何個以上の体細胞遺伝子変異があればキラー細胞に攻撃されがん治療効果として出てくるかという閾値を計算した結果、メラノーマでは100個、非小細胞肺がんなら178個と算出していました。この傾向は大腸がんでも同様だろうというのが彼の結論です(Ref. 2)。

どのがん種であれ末期になればがん細胞の増殖スピードは速まることが経験されていますが(増殖スピードの速い異常な細胞群が勝ち残ってしまうため)、もし、その際に大量の体細胞遺伝子変異が発生しているならば、
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(1)そういう末期がんにこそ(基本的免疫能が破壊されていない患者では)免疫チェックポイント阻害剤は効きやすいはずだ、
(2)だから、末期がん患者に強力な抗がん剤療法を施して基本的な免疫能を破壊してはならないのだ、
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と想定されます。

References

1. D.T. Le, J.N. Uram, H. Wang, B.R. Bartlett, H. Kemberling, A.D. Eyring, A.D. Skora, B.S. Luber, N.S. Azad, D. Laheru, B. Biedrzycki, R.C. Donehower, A. Zaheer, G.A. Fisher, T.S. Crocenzi, J.J. Lee, S.M.
Duffy, R.M. Goldberg, A. de la Chapelle, M. Koshiji, F. Bhaijee, T. Huebner, R.H. Hruban, L.D. Wood, N. Cuka, D.M. Pardoll, N. Papadopoulos, K.W. Kinzler, S. Zhou, T.C. Cornish, J.M. Taube, R.A. Anders, J.R.
Eshleman, B. Vogelstein, and L.A. Diaz, Jr.
PD-1 Blockade in Tumors with Mismatch-Repair Deficiency.
New Eng J Med, May 30, 2015. DOI: 10.1056/NEJMoa1500596

2. ”Pembrolizumab efficacy in tumors with MMR deficiency.” ASCO Daily News, May 31, 2015, 3A, right column.