27. がんが体内に形成される段階で成立しなかった免疫反応が、なぜ、そのがん組織をワクチンとして体内に戻した場合に成立するのですか? 自家がんワクチンやがん免疫療法のみなさまから寄せられる質問とその回答をご紹介します。

よくあるご質問

27. がんが体内に形成される段階で成立しなかった免疫反応が、なぜ、そのがん組織をワクチンとして体内に戻した場合に成立するのですか?

(1)自家がん組織の断片を体内の樹状細胞に直接取り込ませるよう、アジュバントとともに注射するのがキーポイントです。体内の未成熟型樹状細胞がこの取り込み能力が高い点を利用します。取り込むと直ぐに所属リンパ節に移行し、そこで成熟しつつ、ヘルパー型Tリンパ球を刺激し、さらにそれを介してキラー型Tリンパ球(特にCTL)を活性化します。これが血流に乗って体内を移動、がん細胞に接触したとき、さらに活性化を受け増殖しつつがん細胞を殺します。がん細胞を殺すようになれば、細胞性免疫が成立したと解釈できます。自然の状態ではが
ん細胞が元気なためがん組織から断片は発生せず、体内の樹状細胞に直接取り込まれることは滅多にありません。
(2)なお、細胞性免疫が成立するためには、がん細胞側にある程度以上のがん抗原が含まれていないといけません。この量は超微量で良いのですが、実際上どのくらい必要なのかは全く不明です。術後肝がんの場合、ホルマリン固定がん組織1グラム以上からならば、作製した自家肝がんワクチンは明瞭に肝がん再発抑制効果があることがわかっており(Peng BG, et al.,Jpn JCancer Res 93:363-8, 2002)、この我々の経験から、他の種類のがん患者様では若干の余裕をみて1.5グラム以上は必要と申し上げております。しかし、がんの種類、個体差によっておおいに違う可能性があります。
(3)もう一つ重要なのは、体内に残っているがん細胞表面にMHC-classI分子が発現していて、その上にがん抗原ペプチドが提示されていなければCTLが異常細胞だと認識できないという点です。通常、MHC-class Iの発現は頻度が低いと言われており、これを刺激する方法の1つがIFN-γ投与です。IFN-γ投与の代わりにBCG-CWSなどの菌体成分を使って体内でIFN-γを産生させている研究者もおります。IFN-γ投与によりがん細胞によってはMHC-class I発現が上昇するものがあり(全部の場合とは限りません)、CTLにより殺されやすくなるというわけです。

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