KRAS阻害剤が米国で承認:「がん種を問わず」遺伝子変異の有無次第で承認薬が使える時代へ 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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KRAS阻害剤が米国で承認:「がん種を問わず」遺伝子変異の有無次第で承認薬が使える時代へ

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株式会社宮田総研・代表取締役・宮田満氏が発信しているメルマガ「新Mmの憂鬱」で昨日(2021/6/16)の最新版では、
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癌の分子標的薬のターゲットとして発見から40年、阻害剤開発が試みられてきたKRAS阻害剤がとうとう
認可されました。米Amgen社が開発した「LUMAKRAS」(ソトラシブ)が2021年5月28日に米国で抗がん剤
として迅速承認を獲得したのです。
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と報じられています。

この承認は、
「新規抗がん剤は、臓器別のがん種ごとに治験を行い、有効性を証明しなければならない」という時代がついに終りにきた
ことを象徴しているという意味で、画期的です。

KRASという分子は、細胞外から細胞膜表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)などを通じてやってくる細胞増殖シグナルを、細胞内で受け取り、細胞核に伝達して細胞増殖を刺激する仲介役の分子です。

このKRASを作り出す遺伝子は、多くのがんで変異していることが知られていて、変異KRAS分子はEGFRなどからのシグナルの有無にお構いなく、常時活性化状態になってしまいます。

このため変異KRAS分子を持ってしまった細胞は、細胞内の増殖シグナルが常に出っぱなしの暴走状態になり、細胞の周囲の状況がどうあろうと構わず、勝手に増殖し続ける(すなわち、がん細胞となる)のだとされています。

大腸がんでは、約40%でKRASをコードする遺伝子の活性化変異が起こっているとされています。

また、KRAS遺伝子に変異がある肺腺がんは、欧米人では30%、アジア人においては10-15%と高い頻度で見られ、喫煙者に多いとのことです。その他のがん種についてもKRAS変異は従来からよく観察されていました。

ということは、変異KRAS分子の活性を抑え込む阻害薬なら、KRAS遺伝子に変異があるがんなら何がんであれ効くはずだ、と考えられます。

これが、冒頭にあるように、発見から40年、営々と阻害剤開発が試みられてきた理由です。

アムジェン株式会社のプレスリリース(2021/4/28)では、
「現時点で、ソトラシブの臨床開発プログラムにおいて、臨床試験開始からわずか2年間で13種類のがん種にわたり700例を超える、最も多くの臨床試験データが得られています」
と主張しています(Ref. 1)。

今回米国で承認されたソトラシブと同様のKRAS阻害剤、アダグラシブでは、2020年11月時点で、既に非小細胞肺がん、大腸がん、膵臓がん、子宮内膜がんに対して有望な結果を示していることが報告されています(Ref. 2)。

本邦では、未だに、臓器別のがん種ごとに治験(第III相試験)を行い、がん種ごとに有効性を示さなければならないという考え方が主流ですが、本年3月31日に施行されたばかりの、

抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」(薬生薬審発0331第1号、令和3年3月31日)

によれば、今後、条件次第ですが、がん種を越えて共通の作用機序がある新薬(候補)に対して、その共通の作用機序に基づいた承認が出る例が現れるだろうと思われます。

つまり、変異KRAS分子阻害薬のように、がん種横断的に効く作用メカニズムを持つ新薬(候補)に対しては、もはや臓器別のがん種ごとに限定した承認審査は時代遅れとなったと考えられるのです。

それを演繹すれば、弊社の「自家がんワクチン」も、どのがん種であれ、細胞性免疫反応によるがん抑制効果という共通の作用メカニズムがあるため、将来的には、がん種を越えて国の承認薬となる可能性があると期待できます。

もちろん、未承認薬が使える自由診療でならば、今すぐにでもがん種を問わず、がんの塊がとれさえすれば、自家がんワクチン療法の受診が可能となっています。

References

1. 「KRAS G12C阻害剤ソトラシブ、KRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の治療薬として日本で製造販売承認申請」、
https://www.amgen.co.jp/media/news-releases/20210428

2.「KRAS阻害薬adagrasibが肺がん、大腸がんなどの固形がんで客観的奏効を達成」、海外がん医療情報リファレンス、2020年11月12日

 

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