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がん化学療法は、がん免疫反応のアジュバントになっている

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従来より、「抗がん剤治療はがん免疫反応を抑制する」とドグマティックに信じられてきましたが、必ずしもそうではない、というデータが蓄積しつつあります。

例えば、脳腫瘍治療に用いられるテモダールについては、Heimbergerらは、”Despite conventional dogma, we demonstrated that chemotherapy and immunotherapy can be delivered concurrently without negating the effects of immunotherapy.”と主張、彼らの創成したペプチドワクチンCDX-110とテモダールを同時投与して治療に成功した膠芽腫の症例報告を出しており(1)、多数例によるPhase II臨床試験で期待をはるかに越える長期生存を達成したと報告しています(2、Full paperは未発表、詳細はおそらく今年のASCO2009に登場するでしょ
う)。

しかし、それだけではなく、更に一歩踏み込んで、「がん化学療法の結果、がん免疫反応を抑制する抑制性T細胞(Treg)やミエロイド由来サプレッサー細胞(MDSC)を逆に抑制することによって、かえってがん免疫反応を促進する」という総説が発表されています(3)。

この総説では、全体で90報の原著論文を引用していますが、低用量のcyclophophamideをメトロノーミックに投与することによってワクチン効果をはるかに増大できること、gemcitabineやamino-biphosphonateによってMDSCを抑制しワクチン効果を増強できること、等について述べ、抗がん剤のがん免疫反応への影響は、抗がん剤の直接的な殺がん細胞効果によるがん抗原スプレッディングにとどまらない、としています。

また、逆に、先天性免疫不全の乳がん患者ではanthracyclinが効き難く、抗がん剤の効力にも免疫能が影響する例にも言及しています(総説内引用文献77)。

免疫反応によるがん細胞のeliminationは、免疫監視機構の重要な機能の一つとして古くから議論されてきていますが、抗がん剤の治療効果でさえも(全部ではなく一部だけであっても)免疫反応を介しているとなると、強力な抗がん剤の処方により体内の免疫担当細胞までほとんど殺してしまうような化学療法を継続するのは、考え込まざるを得ません。

今後は、“免疫能を生かすがん治療”の重要性がますますアップしていくのではないでしょうか。

REFERENCES

1. Heimberger AB, et al.: Immunological responses in a patient with glioblastoma multiforme treated with sequential courses of temozolomide and immunotherapy: Case study. Neuro-Oncology 10: 98?103, 2008.

2. Sampson JH, et al.: Tumor-specific immunotherapy targeting the EGFRvIII mutation in patients with malignant glioma. Semin Immunol. 20: 267-75, 2008.

3. Menard C, Martin F, Apetoh L, Bouyer F, Ghiringhelli F: Cancer chemotherapy: not only a direct cytotoxic effect, but also an adjuvant for antitumor immunity. Cancer Immunol Immunother 57:1579?1587, 2008.