ドーズデンス化学療法(DD療法)はがんに対する免疫反応を改善する
最新の学会/最新の論文から
ドーズデンス化学療法(DD療法)を実施中の先生方も多いと思います。
これは、抗がん剤投与の間隔をできるだけ短くして、がんの再増殖を抑えようとする仮説に基づいています。
しかし、卵巣がんで、標準量の白金製剤とパクリタキセルを間隔を詰めて投与していくと、骨髄抑制が強く表れ、中止せざるを得ないことが多々あります。
そこで、用量を下げたDD療法が試みられ、日本のJGOGグループからの報告(JGOG 3016)でも、卵巣がんでは、最大耐用量を用いた患者群に比べ、有意にPFS (progression-free survival) が延びるとされています。
しかし、なぜ最大耐用量群よりも低用量DD療法群の成績が良いのかというメカニズムの解析はなされていませんでした。
そこで、台湾のChang C-Lらは、マウス実験で、最大耐用量群と低用量DD療法群を比較した結果、低用量DD療法群では、明瞭に抗がん細胞性免疫反応が重要な貢献をしていると報告しています(Ref.1)。
実際に、
(1)マウスの細胞性免疫療法を担う細胞が、前者では激減しても後
者ではあまり減少しないこと、
(2)低用量DD療法群では免疫反応を抑制するマクロファージが逆に
強く抑制されていること、
(3)激減せずに維持されているCD8+ T細胞ががん抑制に重要な役割
を果たしていること、
を示し、しかも、
(4)臨床で白金製剤治療に抵抗性を示した卵巣がん14症例で、低用
量DD療法により病勢コントロールができている4例のうち、3例
がCD8+ T細胞の活性化を示す血清IL-2・IFNg反応を呈している
こと、
を図示していました。
この報告は、何のことはない、
(A)化学療法であっても、体内の免疫反応に依存して治療効果
を示すものであること、
(B)最大耐用量かそれに近い骨髄破壊的な化学療法は避けなけ
ればならないこと、
を示しています。
現在は、抗がん剤は多いほど効くという古い考え方から、個々の患者様の状態に合わせた使い方にシフトしつつあると思います。
しかし一方ではまだまだ、化学療法のみに依存してがん治療を実施していき、最後は最大耐用量かそれに近い用量を用いた結果、骨髄破壊をきたし、化学療法抵抗性に至った患者様に対して、「もう治療法はありません」と宣告して、事実上、がん難民を発生させている場合も多いと思います。
そこに至る前に、ぜひとも患者様の免疫能は維持できる範囲の化学療法にとどめていただきたいものだと弊社では願っております。
REFERENCE
1.Chang CL, Hsu YT, Wu CC, Lai YZ, Wang C, Yang YC, Wu TC, Hung CF.
Dose-dense chemotherapy improves mechanisms of antitumor immune response.
Cancer Res. 2013 Jan 1;73(1):119-27. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-12-2225. Epub 2012 Oct 29.