乳癌”完治”後、20年以上もがん細胞が血中をめぐっている
がん種別の対処法
乳癌では術後10-20年も経てから再発するという”cancer dormancy”現象が知られています。これに対応するがごとく、簡単な細胞濃縮操作とレーザースキャニングで、92%の乳癌・肺癌術後症例の血中に上皮性細胞が検出できるという報告が出ました(文献1)。対照の健常人ではわずか3%です。しかも、がん完治16例中13例でも検出されています。
この報告の前に出されていたMengらの論文(文献2)では、磁性抗体濃縮法とスライドグラス上の厳密ながん細胞同定法を用いて、術後7年以上再発していない乳癌患者の血中で、36例中13例(36%)で乳癌細胞を検出しています。その中には術後13-20年を経た症例が10例もあり、最長は22年でした。
これらの事実と、術後8-20年たった症例でも「再発は年率1%」とされていることから(文献3,4)、手術・放射線・化学療法という術後補助療法を含めた従来型治療法では、”完治”したとしても不完全であることは明瞭です。
ここに、従来型の治療終了後の”完治”例でも、なお、「自家がんワクチン療法を追加する意義は十分ある」と推察できます。
(自家がんワクチンが手術で”完治”したはずの肝癌再発を抑制し、延命効果まで表したことを想起してください。)
Circulating Tumor Cells (CTC)検査はSRLが受託を開始しています
(由来は米国Veridex社の技術で、米国FDAは2004年1月にこの検査に対して認可を与えています。臨床データは文献5。SRLの問い合わせ担当者は、品質保証統括部データインフォメーションチーム・篠沢弘、TEL:0426-46-5911)。
乳癌・肺癌・大腸癌・前立腺癌・卵巣癌・胃癌・膵癌等の上皮性ガンでは、CTCの消長は今後格好の研究対象となるでしょう。SRLによれば、進行がんでは、いずれも19%以上、平均36%の症例で7.5mlの末梢血に2個以上のCTCが検出されています。「自家がんワクチン」療法ならば、術後8-20年も待つ必要はなく、術後すぐに研究がスタートでき、1症例あたり最短3ヶ月で追跡結果がでます。
文献1. → Pachmann K, Longtime recirculating tumor cells in breast cancer patients. Clin Cancer Res 11(15, Aug. 1):5657-58, 2005.
文献2. → Meng S, et al., Circulating tumor cells in patients with breast cancer dormancy. Clin Cancer Res 10:8152-62, 2004.
文献3. → Demicheli R, et al., Time distribution of the recurrence risk for breast cancer patients undergoing mastectomy: further support about the concept of tumor dormancy. Breast Cancer Res Treat 41: 177-85, 1996.
文献4. → Karrison TG, et al., Dormancy of mammary carcinoma after mastectomy. J Natl Cancer Inst 91: 80-85, 1999.
文献5. → Cristofanilli M, et al., New Eng J Med, 351: 781-91, 2004.