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抗がん剤が非常に良く効いている患者”スーパーレスポンダー”

抗がん剤

本日、発行された
     日経メディカル 癌Expertsメール 
2013.12.10 No.290
に、「エリアレビュー・膵癌」の記事が掲載されています。

 ここでは、「膵癌診療ガイドライン」が4年ぶりに大幅改訂されたことが報じられ、大阪成人病センター・井岡達也先生の解説記事が掲載されています。

→ http://medical.nikkeibp.co.jp/all/data/cancerex/ar_pc2013_ioka.pdf

 2009年版に比べ、2013年版では、膵がんにたいして、(1)ゲムシタビン単剤療法、(2)ゲムシタビン+エルロチニブ(タルセバ)併用療法、(3)S-1(TS-1)療法が、3つとも標準化学療法として採択されたことが取り上げられています。

 この解説で注目すべきは、
    (2)のゲムシタビン+エルロチニブ併用療法で、20~50人に
    一人はスーパーレスポンダーと呼べるような長期にわたり効
    果が認められる患者さんがいます
という点です。

 しかも、
   「最近私が経験したのは腹膜播腫を含む多臓器にわたる遠隔転
    移がある患者さんですが、ゲムシタビン+エルロチニブ併用
    療法により、SDの状態が2年近く続いています。
     エルロチニブの効果は皮疹発現との関連性が指摘されてい
    ます。この患者さんでもいまだに皮疹が出現したり、消失し
    たりを繰り返しています。」
と書かれています。

 筆者がこの点を読んで考えたのは、以下のスペキュレーションですが、読者の皆様のご批判をお願いします。

 成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)治療に使用される抗CCR4抗体をがん患
者に投与すると、稀にではあれ、強烈な皮疹を発症し危険な状態に陥る。
抗CCR4抗体は制御性T細胞(Treg)を選択的に殺してしまう作用があるた
め、体内のTregが激減する。
 体内で免疫反応の重要なブレーキ役を果たしているTregがいなくなれば
免疫反応アクセル役の細胞が暴走し、これが強い皮疹を発症させてしまう
と推定される。
 上記症例では、ゲムシタビン+エルロチニブ併用療法により、Tregが減
少、皮疹を起こしている。しかし、皮疹という炎症局所に集合したエフェ
クター細胞群から分泌されたIL-2等のサイトカインが、今度はTreg増加を
促進するため(Ref. 1)、結果的に皮疹が治まる。
 これを繰り返しているのではないか。

 体内で、IL-2のquorum sensing systemがあることは、Ref. 2の文献でも述べられています。細胞毒性のある抗がん剤の作用が、がん細胞を直接殺傷する作用だけではなく、がん免疫反応に依存していることは、今では広く知られていることです

(例えば → 2013.02.14のTopics 
    「がん化学療法も、結局はがん免疫反応に依存している」
    http://www.cell-medicine.com/topics/2013/02/post-272.php )

 ゲムシタビンの作用では、もう一つの免疫反応の重要なブレーキ役の細胞、myeloid-derived suppressor cell (MDSC)、を抑制することも有名な話ですので、
    膵がんの標準化学療法では、
     “知らず知らずにがん免疫療法を行っている”
のではないでしょうか。

1. Matsuoka K, et al.: Altered regulatory T cell homeostasis in patients with CD4+ lymphopenia following allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. J Clin Invest. 2010;120(5):1479-1493.

2. Koreth J, Matsuoka K, et al.: Interleukin-2 and regulatory T cells in graft-versus-host disease. N Engl J Med. 2011 Dec 1;365(22):2055-66.