超高額の抗PD-1抗体:Financial toxicityをできるだけ避ける方法
がん種別の対処法
免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体は、メラノーマで劇的に効きますが、すでに米国で承認されている腎がん、肺がんの他、他のがん種でも有効性が非常に期待されています。
直前のドクター通信 from セルメディシン No. 335
「がんワクチン → 抗PD-1抗体」療法を支持:日本がん免疫学会総会- ICCIM2015から」
(2015.07.20発信)
で報告しましたように、ICCIM2015国際シンポジウム(東京、2015.07.09-11)で言及されたキーポイントの一つ、
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・Translational Researchはスピード勝負になった。しかも新薬は高騰しているため、financial toxicityが出てきた。今は、肺がん患者一人あたり1億円かかる。 (国立がん研究センター東病院の土井俊彦先生)
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とあるfinancial toxicityは、抗PD-1抗体についてはdoseを下げ、治療期間を限定すればある程度回避できそうです。
抗PD-1抗体はいずれも超高額です。例えば
オプジーボ点滴静注100mg の薬価は、729,849円/瓶
もします。
通常の投与量は、3週間に一度、体重1kgあたり2mgを点滴投与しますから、体重50kgのヤセぎすの方でも、1回に73万円、年17回投与するとしますと、1年で1,241万円もかかることになります。
薬代だけではなく、がん治療には何かと費用がかかりますので、大まかに言っても年間1,500万円(健康保険と高額療養費制度に救われても年間100万円超)はかかると覚悟しなければなりません。
これがもし、保険外で全額自費負担(悪性黒色腫以外のがんでは全員)となれば、大富豪以外は継続的な受診が無理となります。これが
● 経済的毒性(financial toxicity) ●
です。
(まして、肺がんでは、やはり高額な分子標的薬を次々にとっかえひっかえ使用しますから、1人の患者さまの生涯あたりでは治療費が1億円に達するのもあながち誇張とは言えないのです。)
このとき、通常の抗PD-1抗体投与量、
(推奨はオプジーボ、キートルーダとも、3週毎に2mg/kg ※)
(※肺がんの場合ASCO(米国臨床腫瘍学会)では3mg/kgを隔週投与)
を半量にすれば、抗PD-1抗体のfinancial toxicityは半減します。
問題は、1mg/kgでも十分な臨床効果が得られるか、ですが、現時点では正確なところはわかっておりません。
しかし、オプジーボに関しては、1mg/kg単回投与で3週間後でも血中濃度は6μg/mLあり、仮に0.3mg/kg単回投与だったとしても血中濃度の減衰曲線の並行性から推定して、3週間後でも血中濃度は1.3μg/mLもあると推定され(オプジーボ添付文書より)、少なくともin vitroならおつりがくるほどの十ニ分な有効範囲を保っています。
Topalianの各種がんに対するnivolumabのdose-response試験でも(ただし投与間隔は2週間)メラノーマに限って言えば0.1, 0.3, 1, 3,10mg/kgの間で明瞭なdose-responseがない(他のがん種では若干あるが)ことから(Ref.1)、3週間間隔にするにしても1mg/kgで十分であろうと推定されます。
また、実際、銀座並木通りクリニックの第1例でも、
(→ 2015.06.29 「自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用は安全で効果的だという最初の症例がでました」 を参照)
キートルーダを1mg/kg(3週おき)に抑えて使用し、有効となっています。
さらに、今回、銀座並木通りクリニックでは、この低用量抗PD-1抗体投与で別の成功例、
「肺小細胞がん: 抗PD1抗体薬 + 放射線治療 併用症例 」
を経験しています。 (→ http://ameblo.jp/gin-nami )(2015年07月19日 公開分)
この症例では、縦隔リンパ節転移巣に30Gyの放射線照射を行った後に(右下葉の原発巣は,以前放射線照射を行っていることもあり、これ以上の照射ができなかった)、オプジーボ 1mg/kgを隔週で4回投与して原発巣縮小に成功しています。
この症例では、自家がんワクチンを使用していませんが、手術既往症例で,切除標本が入手可能であれば、
・銀座並木通りクリニック・三好立院長は、
「自家がんワクチンとの併用」
を推奨しています。
すなわち、Tumehの論文(Ref. 2)により、
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●事前にがん組織中に浸潤しているCD8+ T細胞で、PD-1/PD-L1結合(免疫チェックポイントの一つ)により、がん細胞を殺せない状態に抑えこまれているT細胞がいることが必要で、これを増殖させられれば、がん縮小効果が得られる、
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ことから、
(1)事前に「自家がんワクチン」を接種(できるだけキラー活性のあるCD8+ T細胞を増やしておくため)、
(2)後から免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体を投与する、
ことが、一層抗PD-1抗体を効果的にさせる方法だということです。
詳しくは、ブログ(「あとは緩和」といわれたら)、
(→ http://ameblo.jp/gin-nami )(2015年07月19日 公開分)
をご覧下さい。なるほどとご納得いただけるはずです。
References
1. Topalian SL, Hodi FS, Brahmer JR, Gettinger SN, Smith DC, McDermott DF, et al. Safety, activity, and immune correlates of anti-PD-1 antibody in cancer. N Engl J Med 2012;366:2443-54.
2. Tumeh PC, et al.: PD-1 blockade induces responses by inhibiting adaptive immune resistance. Nature. 2014 November 27; 515(7528): 568-571.
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★“自家がんワクチン療法”は「厚労省への届け出は不要です」★
自家がんワクチンが、生きている細胞を含まないため培養不要で、再生医療等安全性確保法でいう「細胞加工物」(人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの)に該当しないためです。
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