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ハーセプチンはなぜ効かなくなるのか

抗がん剤

乳がんの抗体医薬ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は一般に半年ほど連用すると効かなくなってしまうことが知られており、この理由は明らかではありませんでした。

 ハーセプチンの標的分子はEGFのレセプター(HER2/neu)で、チロシンキナーゼ活性をもっています。EGFの結合により活性化されるとその細胞増殖シグナルを別のHERファミリー分子であるHER3を介して伝達していきます。

 ところが、HER3分子には細胞内でフィードバック機構が働いており、活性化したHER2からのシグナル伝達が少なくなると、HER3分子が増えて不足分を補うことが判明しました(1)。これが、ハーセプチンでHER2の活性が阻害されても、がん細胞自体の増殖が阻害されなくなってしまう原因の一つと考えられます。

 おそらく、他の関連分子群も含めて、増殖シグナルを全部一斉にシャットダウンしてしまうような強力な分子標的薬群がそろうまでは、細胞内増殖シグナルに関与する分子一種づつのモグラタタキが続きそうに思われます。

REFERENCE

1. Sergina NV, Rausch M, Wang D, Blair J, Hann B, Shokat KM, Moasser MM. Escape from HER-family tyrosine kinase inhibitor therapy by the kinase-inactive HER3. Nature. 2007 Jan 25;445(7126):437-41. Epub 2007 Jan 7.