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大腸がん:血中がん幹細胞数が予後予測因子となる

がん種別の対処法

3月21日発表のJ. Clinical Oncology誌のEditorial(Early release版*)に、circulating tumor cells(CTC)よりも、circulating tumor stem cells(CTSC)の数を測定した方が良い予後予測因子になるとの議論がなされています(ref. 1)。

* http://jco.ascopubs.org/content/early/2011/03/16/JCO.2010.34.0026.full.pdf+html

 もともとがん細胞が血中に流れていることを示すCTCは、乳がん・前立腺がん・大腸がんでは、予後予測因子になるとされていました。この測定では細胞表面のEoCam分子(上皮細胞の接着分子、これを磁気ビーズに付けておき血中の上皮系細胞を集める)、DAPI(細胞核蛍光染色、有核を証明)、抗サイトケラチン蛍光抗体(上皮細胞に発現)で染めて検出、そのうちCD45抗体(白血球に発現)に反応しない細胞数として表しています。

 しかし、感度が低く、必ずしも予後をあらわす信頼度の高い結果が得られないという問題点がありました。

 そこで、がん細胞全体の増殖はもっぱらその中の幹細胞の性質をもつ細胞(cancer stem cells)に依存していること、しかもこのがん幹細胞は化学療法抵抗性であること、がん幹細胞を殺せなければ予後不良となることから、血中のCTCよりもCTSCの数の方がより正確な予後予測因子になるはずだ、という考え方が生じていました。

 今回、飯沼らは、CTSCを測定するため、正常な造血幹細胞には発現していないCD133に着目し、しかも高感度なmRNAのPCR法を用いて、血中細胞のうち「腫瘍マーカーCEAを発現している/サイトケラチンも発現している/CD133も発現している」という細胞群を定量したところ、大腸がん症例(n=315)を対象にした前向き試験では、これらがん幹細胞が血中を流れている症例の予後は不良(p<0.003)との結果を示すことに成功しています(ref. 2)。  従来は、血中腫瘍マーカーのレベルが腫瘍存在を表し、予後予測因子にもなるとされてきましたが、かなり腫瘍サイズが大きくなってからでないと正確に測定できない、精度の高い予後予測因子にならない場合も多いという問題点がありました。  今後は、血中CTSCレベルという新しい高感度診断法が、おそらく大腸がんだけではなく、多くのがん種でバイオマーカーとして用いられていくことになるだろうと思われます。 REFERENCES 1. Max S. Wicha and Daniel F. Hayes, Circulating Tumor Cells: Not All Detected Cells Are Bad and Not All Bad Cells Are Detected. http://jco.ascopubs.org/cgi/doi/10.1200/JCO.2010.34.0026 2. Iinuma H, Watanabe T, Mimori K, et al: Clinical significance of circulating tumor cells, including cancer stem-like cells, in peripheral blood for recurrence and prognosis in patients with Dukes’ stage B and C colorectal cancer. J Clin Oncol doi: 10.1200/JCO.2010.30.5151