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日本脳神経外科学会でランチョンミーティングを行いました

最新の学会/最新の論文から

日本脳神経外科学会は、脳の手術を行う国内の専門医が集う伝統ある学会です。

 この学会では、昼食の時間にランチョンミーティングがあり、弊社はこのスポンサーをさせていただきました。

 演者は、筑波大学脳神経外科・講師 石川栄一 先生

 座長は、東京女子医科大学先端生命医科学研究所先端工学外科学
    分野/脳神経センター脳神経外科・教授 村垣善浩 先生

 約300名の全国の大学病院・大規模病院の脳神経外科の先生方が参加されました。

 以下が講演の要約です。

    ———————————————
 2007年にn=10で自家腫瘍ワクチン(AFTV)の臨床研究を行い、安全性に問題がないことを確認、その後の臨床研究へと進んでいる。この時点で、3割程度の抗腫瘍効果が見られた。その後、免疫療法に加え、放射線療法(RT)、化学療法の併用効果を検証してきた。

 2011年に行った臨床試験(UMIN0002)では、膠芽腫でRTとAFTVの併用効果を調べ、シングルアームではあるが無増悪期間中央値7.6ヶ月、全生存期間中央値19.8ヶ月と、良好な結果が得られた。予後が良い患者の傾向として遅延型アレルギー(DTH)反応陽性例、腫瘍細胞中のp53陰性例が挙げられた。

 その後のUMIN1426試験では、放射線と同時併用テモダール(TMZ)の術後治療を行った後のTMZ維持療法時にAFTVを投与するプロトコールを実施した。結果として、24ヶ月無増悪生存率が33.3%、36ヶ月全生存率が38%であった(他の新規開発膠芽腫治療法の臨床試験では36ヶ月全生存率は20%程度に集束していた)。

この試験では、年齢が若い、KPSが高い、摘出率が高いと予後が良好であることが分かった。著効例として、42歳男性で言語野に腫瘍があり、全摘できなかったがAFTV投与後36か月無再発だった症例が紹介された。

 また、術後TMZ投与によりLymphopeniaを発症する症例が多くいたが(Grade 2:7名、G3:8名、G4:6名)、G3の患者にAFTVを投与した場合、特に予後が良好であった。この理由としては腫瘍内のリンパ球の比率の変化が関連すると考察される。切除率ではsubtotal total removal(95%以上摘出)の方が、DTH陽転率が高かった。また、5年以上無再発の症例も得られており、現在はphase IIb/IIIのdouble blind試験を行っている。

 免疫療法の分野では新たに抗PD-1抗体に注目が集まっている。RTとの併用や、抗CTLA-4抗体との併用効果が期待されている(ただしRT+抗CTLA-4抗体+TMZは予後不良だった)。よりよい方法はいまだにわからず、この分野はさらなる研究の余地がある。ワクチン療法との併用も検討され、in vivoモデル実験で、ワクチンのみまたは抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体のみでは完
全ではない抗腫瘍効果が、3者併用(ワクチン+抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体)により完全に腫瘍成長を阻害できるという結果が発表されている。

 自由診療の症例で、37歳女性、広範囲の再発膠芽腫、Partial removalでギリアデル(BCNU)を併用した患者にAFTVを投与したところ、投与後2カ月でCRに近い状態となった例があった。BCNUは留置後すぐに薬剤の効果が減少していくが、少し時間が経つと脳浮腫やT2高信号状態となる。BCNUの基質は「ポリフェプロサン20(1,3-ビス(4カルボキシフェノキシ)プロパン)」
であり、これが留置後しばらくの間炎症の原因となる(プラセボでもこの基質により炎症が起こる)ので、免疫系を刺激するのかもしれない。また、グリオーマ幹細胞はCXCR4のターゲットであるCXCL12を自己分泌し、増殖刺激を得てしまうため、このCXCL12をターゲットとした治療法を検討しており、基礎実験レベルでは、shRNAでCXCL12を低下させることにより抗腫瘍効果が得られることを明らかにした。

 脳腫瘍の治療は手術、放射線治療、化学療法に加え、ワクチン療法、抗体療法、養子免疫療法(CARを含む)、さらに抗腫瘍幹細胞治療が今後行われることになっていくと予想される。