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第24回日本バイオセラピィ学会から-3つの重要な話題

最新の学会/最新の論文から

12月1-2日に、第24回日本バイオセラピィ学会が和歌山市で開催されました。そのときに注目すべき話題が3つありましたのでお届けします。

1)要望演題R-1 胆道癌ペプチドワクチンによる特異的CTL誘導が生存率
         に及ぼす影響
         有賀 淳 他(東京女子医大)

 東大医科研で開発された胆道がん特異的抗原ペプチド4種類を9例に、また、3種類を別の9例に投与。全18例中10例でペプチド特異的CTL誘導が(+++)となった症例は、(++以下)の症例群に比べ、有意にOSの延長があった(p=0.036)そうです。

 このとき、ペプチド4種類投与群の1例に、ペプチド投与前にすでにペプチド特異的CTLが強く誘導されている(+++)症例があり、その症例は前治療で「自家がんワクチン療法」を受けた症例だったとのことでした(弊社のデータベースで調べてみたら、CMI0130の症例でした)。
    CMI0437の記載ミスと判明(2012.11.20)

 従来、自家がんワクチン療法では、個々の症例でがん抗原ペプチドに特異的に反応するCTLの誘導を確認したことはありませんでしたが、この1例で、自家がんワクチンは確かに「がん抗原ペプチド特異的CTLを誘導する」という証明がなされたことになります。

2)特別企画その1、その2 癌ペプチドワクチン療法ガイダンス
  座長・山口佳之(川崎医大)、古瀬純司(杏林大)

 この企画で日本バイオセラピィ学会独自の、「がんペプチドワクチン療法のためのガイダンス」(案)が公表されました。

 すでに発表されているFDAのガイダンス(今年11月に正式発行)に押され、本邦の政府ガイダンスが出る前にこの学会が独自に策定し、このガイダンスに従って行う臨床試験(臨床研究/医師主導型治験)がそのまま採択されるように意図しています。

 ここでは、がんペプチドワクチン専用のガイダンス案だと称していましたが、パブリックコメントの後、この案がガイダンスとして採択されてしいますと、今後のがん免疫療法に関する臨床試験は、たとえ臨床研究レベルであっても、この内容に従ったものにするよう、社会的要請を受ける可能性があります。

 特に、ペプチド原薬のみならず添加アジュバントまで含め、承認医薬品レベルの厳密な製造品質規格管理を要求しており、製薬メーカーが供給するもの以外は極めて使いにくい”医薬品”ガイダンスになっていることに注意しなければなりません。

 例えば、「アジュバントの規格は独立して設定されるべきである。」と述べている箇所があります。現在、世界で研究中の新規アジュバントは、アジュバント独自の活性測定法など、規格策定の方法さえないのが現状です。米国のFDAでさえ、アジュバントだけで審査対象とはしない、必ず抗原を含めた医薬品として審査するとしているのです。

3)SP1 統計解析
  大橋靖雄(東大公共健康医学専攻)

 この発表では、Kaplan-Meier curveの統計解析で、がんワクチンはあとからゆっくり効いてくる(遅発性)ため、対照群と処置群のカーブは当初まったく重なり、3-6ヶ月後から乖離してくる、このような場合、log-rank検定を適用するのも、Wilcoxon 検定も間違いだ、前立腺がんの樹状細胞ワクチンSpleucel-Tの承認にあたって、FDAはWilcoxon検定を使用していたのを認めたが、あれも間違いだ、と断言していました。

 その理由は、薬剤の投与期間に応じてハザード比の重み付けをするとき、投与期間にかかわらずいつも一定の効き方をする抗がん剤ならLog-rank検定で良い、しかし、初期は効いても時間がたつと効かなくなり対照群にカーブが重なるようになってくるなら、投与開始初期に重みをおくWilcoxon検定で良いが、逆に初期に効かず後期に効果が出てくるがんワクチンなら、重みを0から1にだんだん増やす方法であるHarrington-Fleming検定が良いということでした。

 オンコセラピー・サイエンス社のがんペプチドワクチンの治験では、この先生の意見が効いているためでしょうか、Harrington-Fleming法による統計解析を行うことを厚労省は事前に承認しているとの発表がありました。