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AACR2013から-2-Cancer Immunology Research誌が発刊されます

最新の学会/最新の論文から

今年の4月6~10日に米国ワシントンDCで開催されましたアメリカ癌学会(AACR2013)に参加してきました。そこから拾い上げた第2弾の話題をお届けします。

 アメリカ癌学会(AACR)の中には、いくつものサブグループが形成されていますが、その一つに”Cancer Immunology Working Group”があります。このグループは、将来的にがん治療の主流の一つに間違いなくがん免疫療法が登場すると期待されていたことから、2007年にAACR内に立ち上げられていたものです(それだけ基礎研究段階ではがん免疫療法の成果が上がっていました)。

 今年、このグループが独自に新しいjournalを発行することが決定され、そのpreview誌が会場で配布されました。それがCancer Immunology Researchの0号です。編集長はGVAXの発明で著名なDana-Farber Instituteの Glenn Dranoffが就任しています。

 今年のAACRで最もホットな話題になったのは、Chimeric Antigen Receptor (CAR) T cellsでしたが、preview誌にはすでに2つの論文(Ref. 1とRef. 2)が掲載されています。

 CAR T cellsはすでに第1世代から第2世代を経て、強烈な作用がある第3世代まで開発されています。原理的には、抗体遺伝子のvariant regionをsingle chainにつなげ(レセプターとして抗原結合部位になる)、その下にT cell receptor遺伝子(CD8のヒンジ部と細胞膜貫通領域とシグナル伝達を行うCD3ゼータ部分)をつなげて、chimeric antigen receptor (CAR)が
発現するように仕掛けし、自家のT細胞にtransfectすれば、その未熟T細胞がCARを発現した成熟したキラーT細胞としてふるまう、というものです。

 第2世代CARでは第1世代分子にco-stimulatory分子からの刺激シグナルを受け取るCD28分子、4-1BB分子、またはOX40分子のどれかをつなげてあり、さらに第3世代CARではこれらの分子群も一緒にCAR分子の中につなげて入れ込んでしまっているものです。

 Ref.1では、ヒトmesothelinに対するマウス抗体のmRNAをCARの材料にすると、患者に繰り返しCAR T cells投与後にアナフィラキシーを惹起した(効きすぎてサイトカインストームを引き起こした)という報告です。

 Ref.2は、効きすぎないようにCAR T cellsを作製するときにCAR分子を2種類に分割したもので、2種類のCAR T cellsを一緒に投与するとほどほどで丁度よくなるという論文です。

 今後、このCAR T cell作製法は急速な発展を遂げ、あっという間にヒト臨床で普及するだろうと推定されます。すでに、40年以上もBリンパ腫に悩まされ続けてきた患者が、たった1回のCAR T cell治療で完治した(骨髄中にもBリンパ腫細胞が見つからない)と発表されていました。しかも、この後の治験は、すでにグローバルレベルで実施する体制を、なんとFDAとノバルティス社ががっちり組んで構築しておりました(Ref. 3)。

米国の官民連合おそるべしです。

REFERENCE

1. Maus MV, Haas AR, Beatty GL, Albelda SM, Levine BL, Liu X, Zhao Y, Kalos M, June CH: T cells expressing chimeric antigen receptors can cause anaphylaxis in humans. Cancer Immunol. Res. 2013; preview, OF23-OF28.

2. Lanitis E, Poussin M, Klattenhoff AW, Song D, Sandaltzopoulos R, June CH, Powell Jr, DJ: Chimeric antigen receptor T cells with dissociated signaling domains exhibit focused antitumor activity with reduced potential for toxicity in vivo. Cancer Immunol. Res. 2013; preview, OF40-OF50.

3. Liu K: Harnessing the Immune System to Treat Cancer: Personalized and
Targeted T-Cell Therapy, Room 150, Washington Convention Center, AACR2013.