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FDAが承認した抗CTLA-4抗体イピリムマブの治療費

最新の学会/最新の論文から

毎年、世界最大のがん関係の学会、「米国臨床腫瘍学会(ASCO)」の話題をお届けしていますが、本年6月8日までシカゴで開催されたASCOからのニュースです。

 ここで出た重要な話題に医療経済問題がありますが、この3月にFDAで承認されたばかりの抗CTLA-4抗体iplimumab (Bristol-Myers Squibb、商品名Yervoy)のコストが、6月14日の新聞ウオールストリードジャーナル紙上でとりあげられています。

“Enlisting the Body to Fight Cancer”By THOMAS GRYTA
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304778304576377892911572686.html

 抗CTLA-4抗体は、T細胞の増殖抑制を起こすシグナル伝達分子CRLA-4を逆に抑え込み、T細胞を増殖させて細胞性免疫反応を促進します。有効な抗がん剤がなかった進行メラノーマで延命効果が証明されており、既に、前立腺がん、肺がん等に適用拡大が模索されています。ただし、自己免疫疾患を誘発するという重大な副作用があります。

 ところが、この治療費はなんと、1コース分で12万ドル(日本円で約960万円)です。

 昨年FDAで承認された前立腺がんの樹状細胞薬プロベンジも、1コースで9万3千ドル(日本円で約744万円)もするため、一時騒然とした話題になりましたが、それを上回る超高額薬品です。

 仮にイピリムマブが日本でも承認され保険適用されるとすると、患者様の3割負担で1コースあたり288万円にもなります。もちろん672万円も負担しなければならない我が国の健康保険制度が破たんするのは目に見えています。

 抗がん剤の臨床開発費は、グローバルに販売する場合を想定すると、既に1医薬品あたり2000億円を超えているとされていますので、これ程の超高額になるのもやむを得ないかもしれません。

 筆者らは、莫大な臨床開発費がかかるのは、多数の患者様を選んでランダムに2つ以上に群分けし、一方に試験対象とする医薬品を、他方に偽薬を投与する大規模な第3相臨床試験を、独立に2回も行って、確かな好成績を得ないと承認しないという審査方針に問題があると考えています。

 そのような「大規模治験」を経由した「保険診療」でなくても、医師の裁量の範囲で実施可能な「自由診療」で提供されている「未承認医薬品の活用」を図れば、すなわち、現在は禁止されている「混合診療」を全面的に解禁すれば、我が国の健康保険制度の破たんを避けることができると考えられます。

 弊社の「自家がんワクチン」は「自由診療」で提供されていますが、1コースあたり150万円前後で、相対的には低額です。イピリムマブのような自己免疫疾患の誘発という重大な副作用もありません。

 メラノーマでランダム化臨床試験は行っていませんが、肝がんではランダム化臨床試験により、術後再発抑制効果と延命効果が証明されています。
→ http://www.cell-medicine.com/cases/clinicaltest_hepatocellular.html

 超高額のイピリムマブを導入すべきかどうか、医療経済面からの慎重な
検討が必要と思います。