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TS-1の骨髄抑制効果~JCOG9912試験結果から~

抗がん剤

シカゴで開催された本年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、進行胃癌(切除不能あるいは再発)に対するTS-1の有用性を証明する発表がなされました(#LBA4513)。これまで標準治療とされてきた5-FUと比較、Overall Survivalを主評価項目として非劣性が証明されています(MST;5-FU群10.8ヶ月、TS-1群11.4ヶ月 (p=0.034))。

 このことから今後の進行胃癌の標準治療はTS-1中心となるであろうとの結論でした。

 TS-1の有効性が注目を浴びたこの発表の中で意外に感じたのが毒性についての結果です。即ち、グレード3以上の白血球減少 (<2000/mm3) が僅かに0.9%であったことです(比較対照群であるCPT-11+シスプラチン群では41.5%)。  TS-1のDLT(投与制限毒性)は骨髄抑制、とされているにも拘らず、今回のJCOG9912試験での投与方法(80mg/m^2の1~28日間、6週ごと)では、骨髄抑制は重篤ではないということになります。もちろん、TS-1の添付文書では白血球減少は45.7%と記載されていますが、グレード3以上は2.7%とやはり低値となっています。  逆に言えば、54.3%の症例では白血球減少は起こらず、抗がん剤に敏感な末梢血リンパ球数も変化しないと想定されます。  これまで自家がんワクチンと骨髄抑制を有する抗癌剤との同時併用は避けてくださいとお願いしてきましたが、TS-1のような代謝拮抗剤のみでの化学療法であれば、自家がんワクチンとの併用も視野に入れた血液検査モニタリングをしてみる価値がありそうです

 もし、その患者様で、TS-1によるリンパ球減少が起っていないなら、自家がんワクチンの効果が期待できると考えられるリンパ球数1,000個/mm^3以上を、TS-1投与継続後も保っていく可能性がかなりあり、同時併用も現実性を帯びるからです。

 事実、骨転移のある乳癌患者さんで、低用量フルツロンと自家がんワクチンとの併用により腫瘍マーカーが正常化された方がおられます
 (→ 症例0153)。

 もし機会があれば、TS-1投与開始前後のリンパ球数の変化にご注目下さい。