免疫チェックポイント阻害剤オプジーボのライバルとして有力なもう一つの免疫チェックポイント阻害剤にキイトルーダ(メルクの日本法人MSD製)があります。
キイトルーダはオプジーボと同じ抗原分子であるPD-1に結合するため、オプジーボと同じ作用を示します。本邦でも悪性黒色腫に対して本年9月28日に承認を獲得しておりましたが、12月19日、非小細胞肺がんについても承認されました。
ただし、承認条件は、「PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対して、というものです。
ここでいうPD-L1とは、がん細胞表面に発現している分子で、キラーリンパ球側の免疫チェックポイント分子PD-1に結合し、キラーリンパ球に「殺しのストップ信号」を送り込む役割を果たします。PD-L1が大量に発現していれば、がん細胞は殺されず、がんがどんどん大きくなってきますので、「殺しのストップ信号」をオプジーボかキイトルーダで阻害すれば、がん細胞は殺され、がん組織が小さくなります。
このようにオプジーボとキイトルーダの作用は同じですから、医薬品としての本質的な違いはないと言ってよいのですが、実は、使用方法に大きな違いがあります。
オプジーボが肺がん治療に承認されたときの根拠となった臨床試験では、がん細胞側のPD-L1発現をあまり重視せずに、非小細胞性肺がん全体を狙って、抗がん剤治療を受け効かなかった患者様を対象にした臨床試験を行い、確かに治療効果があることを証明して承認獲得に成功したのですが、その後、治療開始の最初から(従来型抗がん剤をさしおいて)オプジーボを使用してもらおうと(つまり、治療の第1選択薬にしようと)組んだ臨床試験では、みごとに失敗してしまいした。
従来型の抗がん剤である程度弱らせた後の肺がんでなければ、うまく治療できなかったのです。
それに対して、キイトルーダは、がん細胞側のPD-L1発現率が50%以上もある症例に絞り込んで(つまり、キラーリンパ球側のPD-1との結合をほぼ確実にできるというがん細胞を狙い撃ちにして)、治療開始当初から投与されました。その結果、肺がんの病態進行リスクを半減させる、延命効果もある、という大成功を収めました。
実は、この裏には、がん細胞がどの程度PD-L1分子を発現しているか検査する診断薬(コンパニオン診断薬といいます)の活躍があります。既に日本では、2016年11月25日に承認されているアジレント・テクノロジー社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDx?「ダコ」が診断薬として使える状態になっています。
このような診断薬のおかげで、確実にキイトルーダが効くはずだという患者群をあらかじめ選べたため、診療試験で大成功したという仕掛けです。
このため、キイトルーダはオプジーボと異なり初回治療から使用できる第1選択薬となりました。この薬が適応ならば、最初に従来型抗がん剤による強烈な副作用の洗礼を受ける必要はなくなったのです。
しかし、絞り込みのお蔭で、キイトルーダが使える患者数はグンと少なくなってしまいました。製薬メーカー側からすれば痛し痒しの結果となっています。もちろん患者側からすれば、効く確率が非常に高い超高額薬を有効利用できるようになったというのが大きな福音です。
しかしそれでも、オプジーボで知られてきたように、死亡に直結しかねない重篤な副作用が、同じ免疫チェックポイント阻害剤であるキイトルーダにもしっかりあることには留意すべきです。
ただし、同類のがん免疫反応を促進する弊社の「自家がんワクチン」には、このようなとんでもない副作用はありません。注射ヶ所のちょっとした腫れや一過性の発熱程度で、放置すれば自然に治る範囲のものだけです。
暴れ馬のような免疫チェックポイント阻害剤と、おとなしい「自家がんワクチン」を
うまく組み合わせて、がんをしっかり抑え込んでいく、
というのが今後の新しいがん免疫療法の方向性となるでしょう。
弊社のホームページから、この方向性に沿って治療された
「アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略
(自家がんワクチン+抗PD-1抗体薬)」
の成功例をご覧いただければ幸いです。
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この症例で使用された低用量の抗PD-1抗体薬キイトルーダでは、重篤な副作用はなく、全く問題になりませんでした。
より詳しくは、すでに専門家の厳しい審査を経た学術論文として刊行されており、どなたでも読むことができます。
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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27386130
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★“自家がんワクチン療法”は「厚労省への届け出は不要です」★
自家がんワクチンが、生きている細胞を含まないため培養不要で、再生医療等安全性確保法でいう「細胞加工物」(人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの)に該当しないためです。
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