がん治療のための「自家がんワクチン」の臨床開発は、弊社創業時(2001.07.03)より始まっておりますが、これも含めた“がん免疫療法”に対する本邦の医療界の認識は、当時は
「科学的根拠がない、うさんくさい、おまじない程度の怪しげな治療法だ、患者をだましている」
という、惨憺たるものでした。
「えーっ、ホルマリン漬けのがん組織を使うの?! 効くわけがないでしょ!」と、患者様の目の前で断言した大学病院の女医さんもおられました。
実は、このような認識は現在でも本邦の巷間の医師の間で生きていて、がんの手術を受けた患者様の摘出がん組織は恰好のがん抗原であって優れたがんワクチンの原料となるという英文の学術論文を示しても、「患者様のがん治療のためです」とどんなに頼んでも、患者様ご自身に摘出がん組織を絶対に渡そうとしない依怙地な病院が未だにあります。
しかし、世界の状況はこの15年間で激変しています。特に最近登場した「免疫チェックポイント阻害剤」は、今や“がん免疫療法”そのものの代表例となったのですが、すでに世界では激烈な開発競争が始まっています。
一昨日(2015.06.17)発行のBioMarket Group(バイオのマーケットリサーチ会社)からのメルマガ、
“Targeting Immune Checkpoints in Cancer Immunotherapy 2015”
によれば、すでに承認されている免疫チェックポイント阻害剤は、
・ヤーボイ (ipilimumab), 2011, 米国
・キートルーダ (Pembrolizumab), 2014, 米国
・オプジーボ (nivolumab), 2014, 日本
がありますが、ヤーボイだけでも2013年には$960,000,000(当時の為替レートで約960億円)の年間売り上げがあったそうです。
このインパクトは巨大でした。
それからまだ2年もたっていないのに、すでに世界では85社が148種類の免疫チェックポイント阻害剤を開発すべく、56種の異なる開発ターゲットに対し、463件の開発プロジェクトを走らせているそうです。
まさに狂乱的“がん免疫療法”開発競争状態に突入したと言えましょう。
もはや“がん免疫療法”は、がん治療に必須の知識に発展しています。読者の皆様には、もしお知り合いの医療関係者がおられれば、現在の状況を話のタネにしてみていただければ幸いです。