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治験とは違う実臨床データの大切さ

最新の学会から

MEDPAGE TODAYという米国の医療従事者向けニュースサイトがあります。

このサイトは、米国ペンシルベニア大学医学部生涯教育部門
(University of Pennsylvania School of Medicine, Office of Continuing Medical Education)
の査読を経て正確な記事を配信することで定評があります。

先週(2021年10月6日)着信したニュースのトップに、

“Atezo-Chemo Benefit in Extensive-Stage SCLC Seen Outside Trials, Too”
(アテゾリズマブ-化学療法は臨床試験外でも進行肺小細胞がんに効く)

というものがありました。

ニュースそのものには、
“Read the Most Accessed Articles From the ASCO Educational Book”
(ASCOの教育本中、最もアクセス数が多かった論文
とのヘッダーがつけられていますから、米国の標準治療法の教育であることがわかります。

小細胞肺がんは、非小細胞肺がんに比べて、増殖スピードが速く、転移しやすいという特徴があるため、一旦進行してしまうと治療困難になってしまいます。

免疫チェックポイント阻害剤が登場するまでは、長らく旧式の低分子抗がん剤による化学療法ばかりが使われてきました。

それが治験(IMpower133, Ref. 1)の成功によって、がらりと変わってしまい、
アテゾリズマブ(抗PD-L1免疫チェックポイント阻害剤)+カルボプラチン +エトポシド
が第一選択になったのです。

ですが、

第III相治験での成功データがそのまま、通常診療を行う臨床現場における治療成功データ
(= 実臨床データ、リアルワールドデータ)
になるとは限らない、

のが厄介なところです。

有体にいえば、
“治験では格好いいデータがでているけど、現場で本当に効くの?”
というわけです。

特に、登録症例数が4-500人もいる大規模な治験では、ランダム化して半数ずつ、被験薬群と対照薬群に割り付け、それぞれの群のカプランマイヤーカーブが近接していて2群間の差が小さくても、統計学的な有意差が検出できるように設計されています。

2群間の差が小さいということは、被験薬(今回の治験では、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド)、(今回の治験の対照薬はカルボプラチン+エトポシド)、による劇的な効果がそうそう頻発するものではないことを意味しますから、臨床現場では、目の前の患者さんに本当に効いているのかどうか実感できないことがよくあります。

既に指摘されていますように(Ref. 2)、臨床研究や治験という臨床試験では、試験に登録できる患者さんの条件が厳密に規定されます。

例えば、脳腫瘍の治験の場合は、

〇選択基準として、
・年齢が15歳~75歳、
・手術で(画像上)脳腫瘍が全部摘出されている、
・試験を行う施設で治験薬投与を行いフォローアップ可能である、
等、全部で9項目、

●除外基準として、
・登録前14日以内にステロイド剤又はその他の免疫抑制剤の全身投与を行っている、
・抗悪性腫瘍剤ベバシズマブを使用した、あるいは使用予定である、
・交流電場腫瘍治療システム(NovoTTF)を使用予定である、
等、全部で17項目、

もあります。これら全ての基準を満たす方々は、いわば均質化されたモデル患者集団です。

このようなモデル患者集団では、なにがしかの差が被験薬群と対照薬群の間にあれば、その差異が検出されやすいのです。

しかし、現実世界では、15歳未満のお子さんもいますし、手術後も画像上で脳腫瘍がわずかに残っている方、脳圧を下げるためステロイド剤を投与してしまった方、住所が病院から遠いため予定どおり通院できない患者さん等も多数います。

そのため、現実世界で出るデータは、不均質な患者集団によるバラツキの大きいデータとなるため、治験の場合よりは、被験薬による治療成績がずっと悪い方にシフトしやすくなります。

だからこそ、臨床現場の実臨床データ/リアルワールドデータをみたとき、確かに有効だと確認できるなら、臨床試験データよりもはるかに大切なデータとなります

冒頭の、
「アテゾリズマブ-化学療法は臨床試験外でも進行肺小細胞がんに効く」
という結果は、リアルワールドデータそのもので、旧来の抗がん剤(カルボプラチン+エトポシド)に対してアテゾリズマブの上乗せ効果を確認したというものですから、今後も長く標準治療の地位を占めていくことでしょう。

なお、弊社の自家がんワクチン療法の効果につきましては、自由診療で受診したがん種全体2880例の数値表を、
http://cell-medicine.com/cases/report/index.html
に公開しております。

この表中で、「1.有効」とは、
主治医の「オッ、これは効いているゾ」という実感をベースに採択しています。

ここでいう「1.有効」の定義は、

・残存腫瘍サイズ縮小(RECIST法)
・腫瘍マーカー減少(半減以下)
・推定余命より2倍以上の延命
・QOL(KPS評価)の明らかな改善
等の数値化できる指標のいずれか、
または、
・主治医の評価による何らかの臨床上の
好ましい反応があった、

というものですが、まさに臨床現場での判断で「なんかいいことがあったな」という、リアルワールドそのものを反映しています。

患者さんが自家がんワクチン療法を受診したい場合、あるいは医師が患者さんに自家がんワクチン療法を施行する場合、この全体表を参考にしていただければ幸いです。

Reference

1. NCT02763579
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02763579
論文は↓
Liu SV, et al.
Analysis of Patients With Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer Treated With Atezolizumab, Carboplatin, and Etoposide (IMpower133).
J Clin Oncol. 2021;39:619-630.

2. 小田倉弘典、臨床試験と実地臨床のギャップ:残された課題、心臓、2015;47:140-146.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/47/2/47_140/_pdf