2019年11月30日、第16回がんワクチン療法研究会が京都にて開催されました。この会は、がんワクチン療法を受診された症例を中心に据えて、個々の患者さんに最良のがん免疫療法を提供するにはどうすべきかを検討してきた小型の研究会です。
今年の研究会は、
京都府立医科大学脳神経外科教授
橋本直哉先生
を会長に迎え、伝統ある京都府立医科大学本部棟で開催されました。
(実は、京都府立医科大学は、京都大学よりも歴史が古いことを今回の研究会で学びました。京都府立医大の卒業生のほとんどが、地元の京都府で医師として活躍しています。)
その中から、印象的な話題をピックアップしご紹介します。
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がんペプチドワクチン:脳腫瘍に対してはまだまだ頑張っています
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脳腫瘍、特にそのうちの最悪性の膠芽腫、を治療対象にしたがんペプチドワクチンは、世界中で開発されてきましたが、残念ながら、現時点では最終的な治験(フェーズIII)で成功した事例はありません。
4種類のがん抗原ペプチドを患者さん毎に合わせて組み合わせたITK-1ぺプチドワクチンも、膠芽腫に特異的に発現するEGFRvIIIというタンパクを標的にしたぺプチドワクチンも、さらに多種類のがん抗原ペプチドを混合したぺプチドワクチンも、フェーズIII試験で失敗しています。
一方で、今回の会長の橋本先生は、すでに15年に渡り、WT1というがん抗原タンパクから選び出し改変したペプチドをワクチンとされ、膠芽腫の治療に取り組んでこられました。
もともと、WT1ペプチドワクチンは阪大・免疫造血制御学・杉山治夫先生のグループが開発してきたもので、血液がんだけではなく幅広いがん種に応用できるとされています。
読者の皆様にはご存知の方も多いと思いますが、WT1ペプチドを樹状細胞に搭載したものが、いわゆる樹状細胞ワクチンとして有名です。膵臓がんに対して有効ではないかと考えられており、現在、治験が行われています。
以前、阪大で活躍されてきた橋本先生は、WT1ペプチドワクチンにさらにそのヘルパーペプチドを追加した混合型ワクチンを作製され、それを術後の「再発膠芽腫」患者に投与、良い成績を見出されました。
その技術を大日本住友製薬に導出、現在、国際治験中とのことです(Ref. 1、この中のDSP-7888についての項をご覧ください)。
もしフェーズIII試験段階で成功すれば、膠芽腫患者さんには大きな朗報となるでしょう。結果が判るのは、今から2年後だそうです。
このワクチンの欠点は、橋本先生自ら紹介されておられましたが、赤い目立つ注射痕が年余に渡って長く皮膚に残るため、患者さんが温泉に入りにくい、という点だそうです(命が長らえる可能性がありますので、それに比較すれば、温泉を楽しめないとしても我慢できる範囲だと思われますが、、、、)。
もちろん、弊社の「自家がんワクチン」も、負けずに頑張っています。
弊社の自家がんワクチンは、膠芽腫組織丸ごとの断片を原材料にしますので、WT-1もWT-1以外のがん抗原ペプチドもそのヘルパーペプチドもすべて含まれています。そのため、あえてヘルパーペプチドを加えることはしていません。
再発ではなく、「初発膠芽腫」には有効となる可能性が非常に高いことが既に判明しています(Ref. 2)。
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「自家がんワクチン」の場合も注射痕が残りますが、痕跡は小さく、2~3ヶ月以内に自然消失しますので、温泉も楽しむことができます。
これら2種類のがんワクチンをうまく使い分けていただければ、がんのなかでも「最悪中の最悪」と言われる膠芽腫と十分戦うことができると思われます。
Reference
1. https://www.ds-pharma.co.jp/ir/news/2018/20180517.html
2. https://cell-medicine.com/cases/results-brain-tumor-drug.php
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