自分のがん組織は自分で保存を、困難と思える場合は先生に相談を。
“がん”であったとは言え、自分の身体の一部です。遠慮なく返却を請求しましょう。大学病院の病理学の教授も、がん組織は患者さまのものだと言ってます。日本病理学会も、正当な理由を書いた文書があるなら患者様に返すべきだとしています。
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がんの手術後は、どの病院でも必ず摘出がん組織をいったんホルマリン漬けにしてからパラフィン(蝋)に埋め込み、ブロック状態にしてからごく薄い切片を切り出し、病理検査を行います。
しかし、病院まかせにしておくと、ごくごく微量を病理診断用に使われるだけで、パラフィンブロック中の残りの貴重ながん組織は、大学病院では研究のために使われてしまう、民間病院では(あるいはそこから臨床検査会社に廻されると)捨てられてしまう、ということが頻繁におこります。
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がん組織の保存と未来への可能性
患者さまは、手術で摘出したご自分のがん組織を、けっして捨てないように病院に依頼してください。がんが再発したり転移したとき、元の自分のがん組織は再発がん細胞を殺せる強力な武器になります。ご自分のがん組織にだけ、ご自分だけに特有のがん抗原があるからです。
「自家がんワクチン療法」を希望される方は、ご自分の摘出がん組織が必要になりますので、必ず保存願います。また、「自家がんワクチン療法」を希望されない方でも、摘出がん組織を保存しておくことを強くお勧めします。
ハイスピードで発展しつつある現在の医療技術から推定しますと、近い将来、必ずや超微量でも、どんな種類の“がん抗原”があるかがわかる時代がきます。その検出に役に立つと思われるからです。
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がん組織の保存と未来への可能性
病院への依頼が困難な方へ:医療相談の利点
患者様ご自身で手術を受けた病院に依頼するのは難しいと感じられる場合は、このページ上端の「受診できる病院」ボタンをクリックして、そこから検索し、お近くの受診できる病院に医療相談に出かけ、患者様に代わって元の病院に組織返却の依頼状を書いてくださるよう、お願いしてみてください。
例えば、東京・銀座並木通りクリニック(TEL:03-3562-7773)では、来院された患者様のために、医療相談(有料)内で、「院長自ら元の主治医に依頼状を出す」等のサービスをしています。ドクターからドクターへの依頼は成功しやすいとのことです。
手術前なら、術前から主治医に伝えておき、術後すぐにパラフィンブロック(または、 ホルマリン漬けの状態)の自分のがん組織を、できる限り多く、病院から返却してもらい、ご家庭で保存しておきましょう。
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ご家庭でのがん組織保管について
保存方法は簡単です。パラフィン包埋ブロックなら適当な小箱にいれてご家庭の室温・暗所においておけば、何年でも問題なく保存できます。もし、ホルマリン漬け組織のままなら、匂いが漏れないように厳重に(二重、三重に)密閉してご家庭の冷蔵庫にて保存してください。(1日程度の短時間なら室温でも問題ありません。)やはり何年でも保存できます。
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自家がんワクチン作製のための要件と手順
パラフィンブロックができれば3~4ヶ以上あれば、そこからがん組織を掘り出せば「自家がんワクチン」が作製できます。
がん組織は、「がん」部位のみを集めて 1.5グラム以上、できる限り多く、できれば2グラム以上1.5cm x 1cm x 1cm以上の塊か、500円玉の面積と厚さ2mmで2枚分以上か、大人の小指の1/3以上の大きさが必要です。
1回目の手術後に再発したがんを再手術した場合、2回目の手術で摘出したがん組織量が 2グラム以上あれば、そちらを優先的に使いますが、もし不足する場合、1回目の手術で摘出したがん組織を追加して2グラム以上にまとめ、使うことができます。がん細胞は再発したときでも初回手術時のがん抗原を発現し続けていることが多いからです。
患者様が病院から摘出したがん組織の返却を受けるとき、主治医に摘出した組織全体のどの部分が「がん」か、正常組織との境界線はどこか、簡単な線画(図)を描いてもらってください。指定された「がん」部位のみを自家がんワクチンのために使用します。
がん組織を確保するための書式例
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病理臓器の返却に関する日本病理学会倫理委員会見解:患者からの要請に基づく方針
日本病理学会倫理委員会の見解(平成27年11月)では、「病理臓器」は病理診断が確定した後に検体由来者や家族などから返却要請があった場合、【3.ただし、正当な理由の記載された文書による求めがあれば、返却することとする。】としていますので、患者様からの返却申し込み次第で決まります。
原文はこちらにて公開されていますプリントアウトして主治医の先生に持参してみてください。
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日本語版
患者様のがん組織を返却してもらうための要請文書:術後摘出組織についてのお願い
そこで、もし口頭でも、日本病理学会の見解を示して依頼してもだめな場合、患者様から院長あてに手紙形式の文書を出せば、正当な理由としての証拠が病院側に残るため、ほとんどの場合、配慮してもらうことができます。
手紙形式の例文・ひな形を用意しておりますので、ご利用ください。日本語版ではword文書とpdf、英語版と中国語版ではword文書があります。右の上の画像下をクリックしてください。
全国各地にあるがんセンター、大学病院、がん拠点病院等でも、この手紙を提出することによって、病理標本(パラフィンブロック)のがん組織をも、「がん治療のためなら」と患者様に返却していただいた実績が多数あります。
それでも“絶対に返さない”ような頑なな態度をとる病院に対しては、(やむをえない場合の最後の手段として)患者様の身近の弁護士にご相談下さい。解剖臓器プレパラート保存使用貸借契約取消請求事件-返却しなかった医師側敗訴、の判例(東京地裁 平成12年11月24日判決 (判例時報1738号80頁))がありますので、患者様側としては、自信をもって、病院側と交渉してください。
繰り返しますが、がんといえども、もともと患者様の身体の一部であったものです。主治医の先生が真の医療者であるなら、必ず患者様の希望に寄り添ってくれるはずです。