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乳がんの骨転移が起きても、放射線治療等との併用で延命効果が期待できます!
乳がんの骨転移症例における5年生存率は、世界最高の成績を収めています。
“Bone metastasis is a catastrophic complication for most patients with cancer. Not only does it cause intractable pain and . . . fracture after trivial injury, spinal cord compression, and hypercalcemia, it also signifies that the malignant process is incurable. Once tumor cells become housed in the skeleton, cure is no longer possible and only palliative therapy is available.”
(Gregory R. Mundy, Cancer 80 (Suppl 8):1546-1556, 1997)
がんの骨転移は破滅的な合併症である。御し難き痛みを起こすのみならず、、、ちょっとした怪我程度の負荷で骨折をきたし、脊椎が潰れると脊髄を圧迫、高カルシウム血症を起こし、しかもこの悪性化のプロセスは不治であることを意味する。がん細胞が一度でも骨に住みついたなら、もはや治癒は不可能であって姑息的治療法しかない。
がんが骨に転移すると、長らくこのように言われてきましたが、あきらめるのはまだ早いのです。
乳がんが骨に転移したときは怖い!
下図はデンマークの全国調査で明らかにされた乳がんの予後です。35,912人もの乳がん症例が見つかっていて、その予後が詳しく調べられています。
乳がんは、骨に転移しなければ、比較的ゆっくりと進行するがんです。5年生存率は75.8%もありますので、乳がんが発見されたからといってあわてる必要はありません。
しかし、骨に転移するとトタンに凶悪になり、5年生存率はわずか8.3%に激減します。骨折などを伴いますと、2.5%にまで低下してしまいます。骨転移があるということは、体内に爆弾をかかえているのと同じです。骨転移がいかに危険かが、よくわかります。
乳がん骨転移症例に対する自家がんワクチンの効果
(レトロスペクティブ解析)
乳がんが骨転移を起こした場合、従来はどんな治療をしても治せないとされてきました。しかし、自由診療にて自家がんワクチン療法を受診された「乳がん骨転移症例」についてレトロスペクティブ(後ろ向き)にカルテを詳細に調べ、患者様の予後を解析してみたのが以下の臨床成績です。
また、この試験の方法は、大学病院医療情報ネットワークでUMIN000029726として公開されています。
今回のレトロスペクティブスタディでは
弊社技術である「自家がんワクチン療法」は、患者様本人の体内で免疫細胞を活性化し、手術で取り残したがん細胞を免疫力で除去することを目的としています。
今回の研究では、自家がんワクチンを自由診療で受診された乳がん症例119例中に、20例の乳がん骨転移症例の方がおられました。どの患者様も乳がんの手術後、標準的な化学療法はもちろん、ホルモン療法や放射線治療も含め、さまざまな治療(包括的治療)を受けておられます。
唯一の違いは、それらの治療に自家がんワクチン療法を上乗せしていることです。その予後は、以下のようになりました。
発表論文
デンマークの全国患者登録との比較
今回のレトロスペクティブスタディの結果(青線)は、デンマークの乳がん骨転移症例の予後よりも、大きく右にずれています。すなわち、明瞭に延命効果がある、と推定されますが、少し問題があります。
実は、デンマークでは、世界の他の国々に比べて、乳がん発生率が特に高いことが知られていて、予後も悪い国とされているため、日本人の乳がん骨転移症例で自家がんワクチン療法を受けていない方々と比較しなければ、より正確にはわからない、という点です。
そこで日本から発表されている乳がん骨転移症例の予後データに重ね書きしてみました
日本から発表されている乳がん骨転移症例の予後データは、骨転移の研究でもよく引用される有名な論文です。
(M. Koizumi, et al, Annals of Oncology, 14:1234-1240, 2003.今回はこの中のFig.2のグラフを引用させていただきました)。
そうすると下図のようになります。
グレーの線のうち、(1)の線は、胸骨に単発の骨転移がある症例群、(2)の線は、胸骨以外の骨に単発の骨転移がある症例群で、2つの線はほとんど重なっています。(3)の線は2個以上の骨転移がある多発骨転移症例群です。(単発転移群に比べて、明らかに予後が短いことが判ります。)
ここでも、今回のレトロスペクティブスタディの結果(青線)は良好です。患者さんの半数が生存している期間(全生存期間中央値、mOS)の値を比べてみて下さい。
今回のレトロスペクティブスタディの解析対象になった骨転移のある症例群には、単発の骨転移だけではなく、多発骨転移の方も、内臓への転移のある方も含まれています。それでも、mOSが60ヶ月(5年!)もあるのです。
Koizumiらの論文では、上図のデータ図の下に、各年ごとに生存している症例数(No. at risk)が表になって記載されています。その表から(1)の線に対応するNo.と(2)の線に対応するNo.を足し合わせた総数289例について、今回の20例の(No. at risk)と比較したのが下図です。生存各年ごとに統計学的な有意差があること、つまり、自家がんワクチン療法を受診した乳がん骨転移のある方々は、「長生きできている」ことを示しています。
乳がん骨転移症例で全生存期間中央値(mOS)60.0ヶ月(5年)は、
自家がんワクチン療法の臨床的完全奏効率は、世界最高の成績です。(2018年1月時点)
自家がんワクチン療法は、20例中3例(15%)で1年以上の臨床的完全奏効率(cCR)を維持しています。
これは、世界中で使われる学術文献のデータベースPubMedを発表論文の著者が検索したとき、2018年1月時点で世界最高の成績です。
決して治せない、と信じられていた乳がん骨転移は、確率は低いとはいえ、治せる可能性があるのです。
※治療不能とされている乳がん骨転移の日常診療でさえこれほどの成績となるなら、他のがんの骨転移でも自家がんワクチンは有効になると推定できます。