新型コロナウイルスによるパンデミックの最中ながら、読者の皆様にはご健勝のことと推察申し上げます。
さて、弊社は、理化学研究所発&筑波大学発のベンチャー企業として、2001年7月3日に設立され、この度、設立20周年を迎えることができました。
これもひとえに、がん患者様、医師を始めとする医療関係者の皆様、弊社従業員・役員・株主の皆様、弊社取引先の皆様、また、がん免疫療法の研究開発に係る皆様など、すべてのステークホルダーの前向きのサポートがあってのことと感謝しております。
顧みれば、弊社起業前の時代、1990年代では、がんに係る免疫療法としては、実際上、バイオロジカルレスポンスモデファイヤー(BRM)しかなく、リンホカイン活性化リンパ球(LAK)療法が登場したばかりでした。
そのLAK療法も、先駆者であった米国国立健康研究所(NIH)のRosenberg博士が、第1報でがん治療に有効と大いに持ち上げたものの、第2報では期待できない結果となったと自ら否定、腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)の活用研究に早々にシフトしてしまったという時代でした。
これに対し、理化学研究所にて我々は、当時は不可能とされていたヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の増殖培養に成功したため、がん患者への臨床応用に乗り出しました。
筑波大にて治療対象にした第1例は、脳腫瘍のうちの最悪性として知られる膠芽腫の患者でした。
最末期の膠芽腫患者の脳内に、患者自身のCTLを直接注入したところ、わずか2日で膠芽腫が3分の1に激減するという、まさかと思える効果を目の当たりにしたことが、ベンチャー起業に向けた出発点となっております。
起業前後のがん免疫療法の時代状況や、必ずコストの壁にぶつかる細胞培養を伴う免疫細胞療法を避け、体内で免疫細胞を活性化する“自家がんワクチン療法”の開発へと進んだ経緯は、
. 大野忠夫・坪井康次:「がんワクチン」、pp. 1-241、ディジタルメディスン、東京、2005.
に詳しく述べております。
. (本書は廃刊となってはおりますが、pdf版として無料で配布しております。電子メールにて
. tkb-lab@cell-medicine.com
. までお申し込み下さい。)
また、弊社ホームページのうち、
「自家がんワクチンの開発史」のページ
https://cell-medicine.com/about/history.php
にも、科学的な根拠とともに詳しく掲載しております。
起業後、本邦で許可されております自由診療による自家がんワクチン療法を続けながら、臨床研究として膠芽腫を対象にしたパイロットスタディ、第IIa相臨床試験、第IIb相臨床試験と段階を踏んで臨床開発を進めて参りました。
有望な結果を得て、現在は、東京女子医大、筑波大を始めとする全国11大学の脳神経外科の共同体制による医師主導治験第III相試験を実施中です。この治験は最短で2025年度末までかかる見込みです。
他のがん種につきましても、現時点では未だ自由診療による結果ではありますものの、有望な症例報告が続々と誕生しております。
“自家がんワクチン療法”は、がんの手術を受けたことがある方であれば、そのがん種によらず適応可能で、問題となる副作用はほとんどありません。
苦しみのないがん治療法の樹立のために、弊社としては企業体力がある限り、渾身の力を込めて臨床開発を続けていくことをここにお約束申し上げ、設立20周年のご挨拶といたします。
2021年7月5日
. セルメディシン株式会社
. 代表取締役社長
. 大野 忠夫