がんに関する“肥満パラドックス” 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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がんに関する“肥満パラドックス”

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大型の肥満の方は、がんにかかりやすいということは、様々な調査から明らかにされています。

しかし、太っている人の方ががん治療が成功しやすく長生きできるということも推定されています。

この現象は“肥満パラドックス”として知られていますが、本当にそうなのかという点については、十分な調査研究がありませんでした。

2022年2月に出た論文で(Ref. 1)、肥満度(BMI)と免疫チェックポイント阻害剤の効果の関係が詳しく調べられ報告されています。

この論文で使用されたBMIの定義は、
.  体重(Kg)/身長(m)^2
で、調査対象者は、

・正常体重(BMI, 18.5-24.9)
・超過体重(BMI, 25-29.9)
・肥満(BMI, 30以上)

に分類されています。

1840例の調査結果は、免疫チェックポイント阻害剤投与開始後の全生存期間で比べたところ、

. 肥満>超過体重>正常体重

の順となっていました(すべて統計学的有意差があります)。

つまり、太り気味の方に免疫チェックポイント阻害剤は良く効くということを示しています。

また、一方で、免疫チェックポイント阻害剤には、命にかかわる強烈な副作用
. (immune-related adverse events, irAEs
もあることが知られています。

そこで、このirAEsの発生頻度と肥満度の関係が、3772例のがん患者を対象に調べられています(Ref. 2)。

そのうち、ニボルマブ(オプジーボ、3mg/kg)の単独療法を受けた2746例では、肥満者でirAEsの発生頻度が高いこと、

(ただし、重篤なグレード3, 4のirAEsの発生頻度は、肥満者でも高いわけではなく変わらないこと)

が示されました。

つまり、太り気味の方には免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連の副作用も出やすい(体内で強い免疫反応が起きやすい)ということを示しています。

免疫チェックポイント阻害剤は、今やがん免疫療法の代表選手という位置付けですから、他のがん免疫療法でも(弊社の「自家がんワクチン療法」でも)、同じように、太り気味の患者さんには良く効きそうだと推定されます。

一方で、本邦における調査から、(免疫チェックポイント阻害剤との関係は不明のままですが)、非常に痩せている方は、どうやらがんが治りにくく死亡率が高くなる、ということも示されています。
→ https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/266.html

以上を総合的に勘案すれば、
.  がん免疫療法では、非常に痩せている方を除き、
.  ある程度、体脂肪がついている患者さん
.  (外見でみてまだ元気そうに見える方)
.  の方が効きやすいだろう、
と考えられます。

ただし、弊社の「自家がんワクチン療法」の経験例の中には、

https://cell-medicine.com/cases/specialists-agree/

のページに示してありますように、

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胃がん-2:まさか、まだとは

AFP産生胃がん は、静脈侵襲が強く、肝臓にとても転移しやすいがんです。手術後の再発例も多くて、予後不良(ほとんどがまもなく死亡する)、とされています(椎名伸充 他、AFP産生胃癌の臨床病理学的検討、千葉医学 88:97-101, 2012) 。

この方は、来院したとき、体重が急減していて、自家がんワクチン投与後は全く連絡がつかず、2009年末時点では担当医が「(推定)死亡」と診断するほど状態が悪かったのですが、

〔症例1046〕
1年間抗がん剤治療施行後、2009.11.24自家がんワクチン納品。
抗がん剤使用時はAFP=40~50前後のまま低下せず、
体重が65kgから40kg台に急減したため、1ヶ月休薬後に自家がんワクチン投与。
. (2010.07.13フォロー調査時点までは全く連絡がつかず)、
. (推定)死亡と診断。
. (2012.09.12患者様の奥様より電話あり)
. 自家がんワクチン投与から3年経過した今でもAFP=2~3程度におさまっている。
. (2013.07.25再度)全く問題なく仕事に復帰しており、非常に感謝しているとの連絡があり、友人のためとしてワクチン関係の新規資料請求があった。
. (2017.05再々)現在も全く問題なく、自家がんワクチン投与後すでに7年経過。

元の治療病院でも驚きの症例で、患者様は定期的に元の病院に連絡するように言われているとのこと。

というわけで、「死者が生還した!」と言われるほどに、驚きをもって転帰が修正された著効例です。
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という症例もあります。

肥満とがん免疫療法の効果の関係も、単純ではありませんね。

References

1. Yoo S-K, et al.
. Outcomes Among Patients With or Without Obesity and With Cancer Following Treatment With Immune
. Checkpoint Blockade.
. JAMA Network Open. 2022;5(2):e220448.
. doi:10.1001/jamanetworkopen.2022.0448

2. McQuade JL, et al.
. Association of Body Mass Index With the Safety Profile of Nivolumab With or Without Ipilimumab.
. JAMA Oncol. 2023;9(1):102-111.
. doi:10.1001/jamaoncol.2022.5409


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