2015年1月30日のThe ASCO Post(米国癌治療学会ASCOから発信されているオンラインニュース)で、
「進行乳がんでは、エリブリン は カペシタビン の効果をしのぐことができなかった」
と報じられました(原著論文はRef.1)。
エリブリン(商品名:ハラベン)とカペシタビン(商品名:ゼローダ)はともに日本で開発された低分子化合物で、どちらも細胞分裂阻害剤です。
カペシタビンは、骨髄細胞や消化管ではなくがん細胞内で選択的に5-FUに転換する抗がん剤として、既に世界100ヶ国以上で承認されている旧薬です。主に手術不能又は再発乳がんに適応とされ、また、大腸がん、胃がんにも汎用されていますが、重篤な副作用として手足症候群(手足や指先、足底などの四肢末端部に、しびれ、皮膚知覚過敏、ヒリヒリ感・チクチク感、発赤、色素沈着、腫脹等があらわれる。表皮の基底細胞の増殖阻害が原因と推定されている)が知られており、これが出てくると服用をストップせざるを得なくなってきます。
一方、エリブリンは、2010年11月に米国食品医薬品局 (FDA)、2011年1月に欧州医薬品庁 (EMA)から、「アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種類のがん化学療法による前治療歴のある転移性乳がん」に対して承認されています。こちらにも重篤な副作用があり、強い骨髄抑制(白血球が激減する)による感染症に要注意です。
エリブリンは大規模臨床試験で、進行・再発の乳がんにおいて、従来の治療と比べて生存期間を有意に2.7ヶ月延長することが認められ、「再発治療において有意に生存期間が延長したことは、今までの薬剤では見られなかった画期的なことだ」として承認された“期待の新薬”だったのです。
しかし、やはり“期待の新薬”も、別途に臨床試験をやり直してみたら、旧薬であるカペシタビンと効果は実は変わらなかったとなれば、しかもどちらも強烈な副作用があることを考えれば、低分子細胞分裂阻害剤ではがん治療には限界があると考えざるを得ません(要するに治らないのです)。
この状況を打破するには、低分子細胞分裂阻害剤とは作用原理が決定的に異なる治療法が必要です。その有力な候補には、物理的治療法(手術、放射線、熱、凍結等の方法)とがん免疫療法があります。
日本の乳がん関係学界では、残念ながら未だにがん免疫療法は見向きもされませんが、弊社では、進行乳がん中でも最も難しく「もはや治療法がない」とされているトリプルネガティブ乳がん骨転移症例を、自家がんワクチン療法と従来療法を組み合わせて治療し、完全寛解にした成功例を体験しています。
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いつまでも従来型の化学療法にこだわることなく、自家がんワクチン療法をご一考いただければ幸いです。
Reference
1. Kaufman PA, et al., Phase III Open-Label Randomized Study of Eribulin Mesylate Versus Capecitabine in Patients With Locally Advanced or Metastatic Breast Cancer Previously Treated With an Anthracycline and a Taxane. J Clin Oncol, Published online before print January 20, 2015, doi: 10.1200/JCO.2013.52.4892