大野忠夫:自家がんワクチン療法の現況、薬学図書館 61(3), 154-160, 2016
pdf版はこちらです → Present status of AFTV-Manuscript-Yakugakutoshokann2016.03
[抄録]
がん免疫療法は,手術・放射線治療・化学療法と並ぶ重要ながん治療法として,既に基礎研究レベルでは確立された方法である。しかし,本邦における臨床サイドの評価は極めて低く,ほとんどの一般病院では未だに“怪しげなる治療法”として扱われている。演者はがん免疫療法の一つ「自家がんワクチン(AFTVac)」療法を開発し,本邦独自の自由診療制度下にて普及を図っているが,未承認医薬品のためか「祈祷に近いもの」とまで言われてしまうのが現状である。ここでは術後肝がんの再発抑制効果を示したエビデンスレベル1bの臨床研究データ,添加剤改訂後のAFTVacによる脳腫瘍(膠芽腫)におけるレトロスペクティブな観点からの延命効果,根治不可能とされているトリプルネガティブ乳がん骨転移が治癒した症例等の各種がん有効症例データを示し,正規の治験を経たエビデンスレベル1aのデータがなくても,安全性を含めて一定の条件がそろっている未承認医薬品には,より一層の規制緩和による「混合診療」を公認すれば,個別化治療が必要ながん患者(特に,がん難民となった人々)のメリットは拡大する,という観点を示したい。
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