自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用は安全で効果的だという最初の症例がでました
がん種別の対処法
現在、がん治療の世界では、
「免疫チェックポイント阻害剤が劇的に効く」
という話題が沸騰しています。いずれも抗体医薬で、欧米と日本で承認されているのは、
・ヤーボイ(抗CTLA-4抗体)
・キートルーダ(抗PD-1抗体)
・オプジーボ(抗PD-1抗体)
があります。
しかし、承認対象になったがん種は、昔から抗原性が高いため免疫療法が効きやすいはずだ、とされていたメラノーマや腎がん、肺がんが中心です。
その他のがん種では、米国がん治療学会(ASCO2015)で卵巣がん等の報告が散見されましたが、もう一段、免疫反応の強化策が必要だと専門家の間では議論されておりました。
そこで弊社では、
(1)先ず、自家がんワクチンで体内の免疫細胞を刺激し、キラーリンパ球を増やす、
(2)頃合いを見計らって、キラーリンパ球の働きを邪魔しているブレーキ(免疫チェックポイント分子)を、免疫
チェックポイント阻害剤ではずす、
という作戦を考え、実施のチャンスを探ってきました。
この作戦を本邦で最初に実行されたのが、銀座並木通りクリニック・院長・三好立先生です。
(ちなみに三好先生は、匠といわれる名医が集まっている、
「がん撲滅サミット」 http://cancer-summit.jp/interview/
のメンバーです)。
対象は、〔症例2329〕子宮頸がん(小細胞がんで、骨盤内リンパ節転移、肝転移あり)で、本日(2015.06.29)、肝転移巣の見事な縮小画像が三好先生のブログ
「あとは緩和」といわれたら
(→ http://ameblo.jp/gin-nami )
にて公開されました。
子宮頸がんのうち、小細胞がんは非常に珍しいがんで、日本癌治療学会の子宮頸がん治療ガイドライン
(→ http://jsco-cpg.jp/guideline/06_2.html )
でも、
「付記2:小細胞癌の術後補助療法および根治療法」
には、
———————
子宮頸部小細胞癌は予後不良と考えられ,これまでに確立した治療法がないのが現状である。
———————
とあります。
まして、今回の症例のように多発転移があるステージIVの方では、医師もあきらめ、「あとは緩和」といわれる可能性が極めて高いのです。
この方の場合、肝転移巣は、自家がんワクチン投与約1ヶ月後に出現、キートルーダを2回投与時点(自家がんワクチン投与からは約2ヶ月後)では、肝転移巣はかえって増大していました(骨盤内リンパ節転移巣は、別途、放射線照射されています)。
当初の2ヶ月ではこの作戦が失敗したように見えたのです。
しかし、キートルーダ投与3回目終了時点(自家がんワクチン投与からは約3ヶ月後)のCT画像では、明らかに肝転移巣が縮小していました。
いわゆる「遅効性」が出てきたわけです。
前回のセルメディシンニュースNo.250(2015.06.24発信)で、
「自家がんワクチンと低用量抗がん剤治療で、まだまだ頑張れます」
の項に、
「肺がん術後・自家がんワクチン+低用量抗がん剤治療」
の症例(CMI2282)をご紹介しました。
この症例CMI2282では、自家がんワクチン投与3ヶ月後(低用量抗がん剤治療開始2か月後)から効き始め、腫瘍マーカーである血中CEAの値が急速に低下しています。
やはり、自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤を併用する場合でも、明瞭な効果が出現するまで3ヶ月はかかるとみておいた方が良さそうです。
しかも、ここまで、副作用は全くなく、自家がんワクチンと抗PD-1抗体の併用でも、安全性に問題はないと思われます。
本邦では、キートルーダと同じ作用があるオプジーボ(抗PD-1抗体)がメラノーマ(保険診療可)以外でも、自由診療ならばまもなく使用可能となる見込みです。
そのときは、ぜひ、上記の(1)(2)の作戦を実行してみて下さい。今回の予後不良な子宮頸部小細胞がんへの治療効果からみて、かなりの治療困難ながん種であっても有効となる可能性が高いのではないでしょうか。
三好立先生のブログは、素人にも非常にわかりやすく書かれていますので、ぜひご覧願います。