ここ数年、がん治療で話題を総ざらいしている免疫チェックポイント阻害剤の代表例に抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、商品名ヤーボイ)や抗PD-1抗体(ニボルマブ、商品名オプジーボ)があります。
これらの免疫チェックポイント阻害剤は、がんを殺すリンパ球の活性化や殺す作用そのものにブレーキをかけている「免疫チェックポイント」で、ブレーキをはずす作用をして、がん治療効果を現します。
しかし、ブレーキをはずすだけで、がんをもっと殺すようにと免疫反応を強く刺激する、「アクセルを踏む」ような作用はありません。
そこで、「アクセルを踏む」役割をはたすがんワクチンと併用すれば、もっとよく効くだろうと推定されていて、世界中でその証明競争が行われてきました。
2015年12月15日に、この証明論文を発表したのがハーバード大のグループです(Ref. 1)。マウス実験ですが、彼らはマウスのメラノーマ(悪性黒色腫)の溶解液をがん抗原にして、「メラノーマの溶解液+免疫アジュバント(CpG-ODN+GM-CSF)」をしみこませたPLG(生分解性ポリマー)担体を埋め込んだものを「PLGワクチン」として作製しました。
あらかじめ、メラノーマ細胞を植え込んでマウスに皮膚がんモデルを作らせ、そこに、
「免疫チェックポイント阻害剤+PLGワクチン+(さらに)免疫チェックポイント阻害剤」、
を投与しますと、すでに出来上がっている皮膚がんが治り、最高で75%のマウスが生き残った(対照群では全部のマウスが死んだ)というのです。
すでに臨床では、GVAXという膵がんのがんワクチンとイピリムマブを併用した方が効果が高いという論文がでています(Ref. 2)から、少なくとも、がん免疫療法で、
◎「がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤を併用すれば効果が一層上がる」
という基本的な概念は証明された、「proof of concept, POC」ができたといえます。
いいかえれば、
◎「アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略」
がとても有効なのです。
弊社では、症例報告レベルですが、すでに2015.06.29に、臨床で、
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自家がんワクチンと免疫チェックポイント阻害剤を併用した最初の症例
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について、良好な治療効果を弊社ホームページに掲載しています。しかも問題となる副作用(グレード3以上の有害事象)は全く無しです。
しかも、アクセル・オン/ブレーキ・オフ戦略は、日本がん免疫学会でも支持されています。
2015.07.20のトピックス、
もクリックしてご覧下さい。
References
1. Ali OA, Lewin SA, Dranoff G, Mooney DJ: Vaccines Combined with Immune Checkpoint Antibodies Promote Cytotoxic T-cell Activity and Tumor Eradication. Cancer Immunology Research, Published OnlineFirst December 15, 2015; DOI: 10.1158/2326-6066.CIR-14-0126.
2. Le DT, et al: Evaluation of Ipilimumab in combination with allogeneic pancreatic tumor cells transfected with a GM-CSF gene in previously treated pancreatic cancer.
J Immunother. 2013; 36(7): 382?389. oi:10.1097/CJI.0b013e31829fb7a2.