がんワクチンと放射線治療の併用はタイミングが大切です 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

トピックス

がんワクチンと放射線治療の併用はタイミングが大切です

抗がん剤以外の治療法 

がんワクチン療法と放射線治療は、むしろ併用した方が良いことはこれまでたびたび弊社からのニュースとして発信してきました。

一般に放射線治療の効果と、照射時の体内免疫能力とは関係がないと長らく思われてきましたが、そうではありません。

例えば、
→ 「放射線治療にも細胞性免疫反応が必要」(ドクター通信No.107)
で示したように、 もともと放射線治療の効果も体内の免疫反応に依存しているのです。つまり、体に免疫力がなければ、放射線治療も効果的には働かないというわけです。

では、「がんワクチン注射と放射線照射は、どのようなタイミングで併用すれば最も効果的なのか」という問題は、いかがでしょうか。

実は、この問いに対する明確な回答はまだ出されていません。ようやくこの程、(まだ動物実験段階ですが)、一つの注目すべき論文が登場しました(Ref. 1)。

この論文によれば、骨髄を破壊しない程度の弱い放射線照射をマウスに行い、24時間後に免疫療法(DNAワクチン注射、T細胞治療、またはその両者)を行うのが最も効果的で、まる2日以後では、体内で免疫反応を抑え込む制御性T細胞が相対的に増え、免疫療法の効果がなくなっていくと報告しています。

つまり、グッドタイミングとなる期間は意外に短い、ということです。

まだ、マウス実験のレベルにすぎず、しかもマウスへの全身照射ですから、ヒトの臨床でも同じとはとても言い切れません。
(例えば放射線照射はマウスでは、放射線照射は1度に行ってしまいますが、ヒトでは放射線の副作用をなるべく減らすため、必ず数回以上に分けた分割照射を行いますし、照射も全身ではなく、局所限定です。)

しかし、少なくとも、ヒトの場合も、放射線治療と免疫療法の間には、相互に効果を高め合うのにグッドタイミングとなる期間は限定されているということは示唆しています。

この論文の著者らも、ヒトの臨床研究が必要だとしていますので、今後の続報を待たねばなりませんが、放射線照射と免疫療法をお互いにいつ行うべきか、は重要問題として登場したのです。

注:2015.10.13記載)2015年時点では、弊社は、放射線治療よりも前に自家がんワクチンを、と推奨しています。これは、従来法ではどんな治療をしても治らないとされていた乳がん骨転移が、「自家がんワクチンを最初に」、その後に「従来法のあらゆる可能な治療を後から」追加したら、乳がん骨転移が治った、という「一種の経験則」から導きだされた段階の治療プロトコールです。

Reference

1.Diab A, Jenq RR, Rizzuto GA, Cohen AD, Huggins DW, Merghoub T, Engelhorn ME, Guevara-Patino JA, Suh D, Hubbard-Lucey VM, Kochman AA, Chen S, Zhong H, Wolchok JD, van den Brink MR, Houghton AN, Perales MA.
Enhanced responses to tumor immunization following total body irradiation are time-dependent.
PLoS One. 2013 Dec 12;8(12):e82496. doi: 10.1371/journal.pone.0082496.

注:弊社は病院やクリニックではなくバイオ企業であるため、症例報告や論文内容のWeb掲載は許容されています。

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