免疫チェックポイント阻害剤の効果は高いが副作用もきつい。患者さんは耐えられるか? 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

トピックス

免疫チェックポイント阻害剤の効果は高いが副作用もきつい。患者さんは耐えられるか?

最新の学会から 

先般、2023.11.24付けにて、セルメディシンニュースNo.569
「免疫チエックポイント阻害剤の実臨床での安全性・有効性はどうか?」
を発信しました。

(弊社ホームページのトピックスにも転載してあります。 こちらです

先般のときは、日本肺癌学会で安全性に関する発表があったことを題材にしましたが、今般、さらに細かく、
.  免疫チェックポイント阻害剤の一つ、
.  イピリムマブ
の安全性に関する学会発表が、
. 第36回日本バイオセラピィ学会学術集会
. (2023.12.13-14、昭和大学、東京)
でありました(Ref. 1)。

この発表では、ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)を併用する際の、イピリムマブの用量について、全64症例中、

(A)3mg/kgを3週おきに4回(悪性黒色腫)、
.   (この投与法の占める割合は32.8%だった)
(B)1mg/kgを3週おきに4回(腎細胞がん、MSI-high大腸がん)、
.   (この投与法の占める割合は9.4%だった)
(C)1mg/kgを6週おきに病勢悪化まで(非小細胞肺がん、悪性中皮腫、食道がん)
.   (この投与法の占める割合は57.8%だった)

をとりあげ、免疫関連有害事象(irAE)発症リスクを比較しています。

その結果、各群のirAEの発症率は、irAEが重篤だとされるグレード3以上を見ると、
(A)42.9%
(B) 0%
(C)21.6%
とのことでした。

グレード3以上のirAEとして多いのは、大腸炎、副腎不全、肝炎・下垂体炎だったそうです。

この解析により、重篤な副作用につながるirAEグレード3以上が多く出現する
「イピリムマブの1回あたりの投与量 3mg/kg」はリスクが高い
投与量だと判ります。

しかも、投与をやめたからといって、すぐにirAEがなくなるわけではありません。なくなるまで数週間から数ヶ月かかることが多いとされていますから、この間、患者さんは、大きな“不自由さ”に耐えなければなりません。

しかもirAEの治療には、ステロイド剤かインフリキシマブ(商品名レミケード、抗ヒトTNFaモノクローナル抗体)が使用されます。どちらも強力な抗炎症剤として知られている薬物です。

ステロイド剤は長期間使用した場合、体内でがん細胞を攻撃するキラーリンパ球を一掃してしまいます。
“アンチがん免疫療法”の最たる薬物です。

TNFaは、細胞性免疫反応を惹起する抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージ等)が活性化するときに放出するサイトカインです。抗原提示細胞の活性化を受けて活性化するのが、がんを攻撃するキラーリンパ球です。

TNFaの作用を抗ヒトTNFaモノクローナル抗体で妨害すれば、結局はがん細胞を攻撃するキラーリンパ球の活性化を抑制することになります。

いずれのirAE対策も、がん免疫療法にとっては不利な結果をもたらすものと考えなければなりません。

繊細な日本人は、イピリムマブ使用によって高率で発生するirAEと、その対策のためにとられる荒っぽい抗炎症剤の長期投与に、はたして耐えられるか、疑問に思うのは筆者だけでしょうか?

Reference

1. 第36回日本バイオセラピィ学会学術集会 2023
. JR2-5
. Nivolumab+Ipilimumab併用療法におけるIpilimumabの投与方法とirAE発現との関連についての検討
. 森田 竜一1)、石川 剛1,2)、伊谷 純一郎1)、曽根 大暉1)、中江 真3)、森本 健司4)、岡田 悟5)、土井 俊文1)、山田 剛司6)、浅井 純3)、藤原 敦子6)、塩崎 敦7)、藤原 斉7)、高山 浩一4)、伊藤 義人1)
. 1)京都府立医科大学・院・消化器内科、2)京都府立医科大学附属病院・がん薬物療法部、3)京都府立医科大学・院・皮膚科、4)同・呼吸器内科、5)同・呼吸器外科、6)同・泌尿器科、7)同・消化器外科

☆彡

本年も押し詰まって参りました。毎回、セルメディシンニュースを受信し拡散していただいている読者の皆様におかれましては、どうか良いお年をお迎えくださいますよう、弊社一同、祈念しております。

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