(続)標準治療を拒否したステージIVのMSI-high型子宮がん:同じタイプの子宮がんに対するがん免疫療法の効果発表が米国でも 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

トピックス

(続)標準治療を拒否したステージIVのMSI-high型子宮がん:同じタイプの子宮がんに対するがん免疫療法の効果発表が米国でも

最新の学会から 症例のご紹介 

2023.6.7 21:30に発信された .「海外がん医療情報リファレンス・ダイジェスト に、

子宮体がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の役割拡大に期待
[米国国立がん研究所(NCI)がん研究ブログ 2023年5月25日]

という記事()が掲載されています。

)こちらにあります
→ https://www.cancerit.jp/gann-kiji-itiran/josei-gann/sikyuugann/post-15170.html

その中では、2つの大規模臨床試験の結果が発表されたとのことで
.  進行子宮内膜がん(子宮体がん)
の女性にとって免疫療法はより一般的な治療になる可能性がある、と紹介されています。

この背景には、

——★★★——
すでに子宮外へ進展していたり転移を伴った状態で子宮内膜がんと診断された女性の長期予後は非常に不良で、5年以上生存できる患者の割合は20%にも満たな い。また、再発子宮内膜がんの女性の長期予後も不良である。(より引用)
——★★★——

という点があります。

2023.05.31のトピックス
. 「標準治療を拒否したステージIVのMSI-high型子宮がん:自家がんワクチンで治療成功!」
で紹介した患者さんは、

子宮類内膜がんで、
子宮全摘、両側卵管卵巣摘除、大網区域切除、骨盤・傍大動脈・後腹膜のリンパ節郭清術
という大手術を受けた後に、肺に9ヶ所もの多発転移+傍大動脈リンパ節転移も検出 という状態でした。

上記の背景説明からすれば、予後絶望的な方でした。

☆彡 それでも、弊社の. 「自家がんワクチン療法」 で助かっていて、今では、仕事に復帰しています。

米国の2つの大規模臨床試験では、 「免疫チェックポイント阻害薬と標準化学療法と併用」 することにより、 一部の子宮内膜がん患者で、
. がんが進行することなく生存できた期間 (無増悪生存期間
が大幅に延長した、と紹介されています。

注目すべきは、
*********************************
無増悪生存期間の延長は、腫瘍に  dMMR(ミスマッチ修復機能欠損) または  MSI-high(高頻度のマイクロサテライト不安定性) と呼ばれる特定の遺伝子変化を有する患者で最も顕著 であった。(より引用)
*********************************
という点です。

(ちょっと専門的な解説)
————*********————
ミスマッチ修復機構(MMR)は細胞内でDNA複製の際の コピーミスを直す機能で、この機能が低下したdMMRの がん細胞ではDNAのコピーミスが蓄積しやすい状態に なります。
また、DNAには1から数塩基の繰り返し配列(マイクロ サテライト)が散在しており、この部分はDNA複製の 際にコピーミスが生じやすく、dMMRの細胞ではマイク ロサテライトが異常な数となり、MSI-highの状態を生 じます。
dMMRおよびそれに起因したMSI-highの状態のがん細胞 は、DNAのコピーミスによって生じる異常タンパク質の 発現(ネオアンチゲンなどがんの目印)が増加するこ とで、免疫細胞による攻撃対象になりやすく、免疫療 法が効きやすい状態となります。
————*********————

がんは、正常細胞に遺伝子変異が起こって、結果的に勝手に増える細胞が選択されてきて塊を造ったものですから、 どの細胞にも本来備えられているべき正常なDNAの修復機能が壊れていても、

. “とにもかくにも早く増えたもの勝ち”  となります。

こうした細胞群の中には、 dMMRやMSI-highが生じていることにもお構いなく増え て「がん」として優勢となる細胞が生き残ってしまう 場合があります。これが例えば「MSI-high型子宮がん」となります。

上記の記事()では、がん免疫療法として、免疫チェックポイント阻害剤である
. ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ) 、と
. ドスタルリマブ(販売名:ジェンペルリ)
が使用されていますが、 どちらの薬剤も、この特定の用途については米国食品 医薬品局(FDA)の承認を受けていないそうです。

上記の2つの大規模臨床試験では、 dMMR群では、治療開始後24カ月の時点で、ドスタルリ マブ治療を受けた患者の約61%が無増悪生存したのに 対し、プラセボ群では16%という結果であったといいますから、もはや米国での承認は時間の問題で しょう。

ただし、ここで重要なポイントが指摘されています。

★★★—————★★★———————
重篤な副作用を含む副作用の発現率や、副作用によ る治療の中断率は、両試験とも免疫療法群でより高か った。
より引用)
★★★—————★★★———————

ことです。

2つの大規模臨床試験で使用された免疫チェックポイ ント阻害剤には、発生頻度は少ないとはいえ、自己免 疫疾患様の症状を惹起するという、命にかかわる強烈な副作用が起こることが知られています。

これは、体内にいる正常なTリンパ球のうちで、普段 は自分自身の正常細胞を攻撃しないようにブレーキをかけられているTリンパ球が、 免疫チェックポイント阻害薬で、全身のブレーキをはずされてしまうため、勢いよく自分自身の正常細胞まで攻撃するようになるために起こります。

それに引きかえ、弊社の自家がんワクチンは、体内 にいる正常なTリンパ球のうちで
自分自身のがん細胞だけを狙い撃ちにするキラー細胞を刺激し、アクセルを踏む役割を果たします。

狙い撃ち以外の細胞は攻撃しません。ですから、非常に安全なのです。

2023.05.31のトピックスで紹介した患者さんも、自家がんワクチン接種後もケロリとしてい ました。

————–★★★—————
しかし、地元の大手病院で抗がん剤による標準治療 を施行されたときは、 頭痛・背部痛、下肢浮腫、頻尿、便秘・下痢、倦怠感・ 労作時呼吸困難、上肢痛み、不眠、貧血進行という典 型的な副作用が集中的に起こったため、 1回の点滴だけで標準治療を中止、自家がんワクチン療 法2コース目に戻っています。
————–★★★—————

もし、このトピックスの読者のお知り合いの方で、
. 「がんの手術を受けた方、これから手術を受ける方」
がおられるならば、ぜひ、そのがんが
.  dMMR型か、MSI-high型か、
お調べになるよう、お勧め下さい。

これらの検査は、主治医の先生を通じて検査会社に依頼すればよく、ごく簡単です。

免疫チェックポイント阻害剤ペンブロリズマブ(キ イトルーダ)は、化学療法の後に増悪したMSI-high型の固形がんに対してならば、
.  “がんの種類にかかわらず” 使える保険薬
として本邦では承認されています。

それと同様に考えれば、
. MSI-high型の固形がんに対しては、“がんの種類にかかわらず”「自家がんワクチンは効く」はずだ
と予想できます。

しかも、キイトルーダのような強烈な副作用はあり ません。
その上、自由診療向けですから、化学療法後にがんが増悪するまで待つ必要もありません。

患者さんが、手術後のご自分のがん組織さえ入手できれば、すぐに使えます。

Reference

1. Katsuhiko Fukuda 1 and Tadao Ohno 2, (1 福田内科クリニック、2 セルメディシン株式会社)
Successful monotherapy with autologous formalin-fixed tumor vaccine for a stage IV uterine cancer patient who rejected rational chemotherapy and immune checkpoint inhibitor treatment.
Clinical Case Reports, in press, 2023


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