乳がんが骨転移した場合、骨転移巣は
「どんな治療をしても治せない」
というのが医療界では常識となっています。
すでに、1997年、マンディが述べたように、
「一旦、がん細胞が骨に住み着いたが最後、治癒させるのは不可能であって、姑息的治療法しか手がない」
(Ref. 1)とされてきました。
例えば、乳がん骨転移巣に対して、強力な放射線治療をしても、がんは一旦小さくなりますが、精緻な画像診断では、消失することは先ずありません。目に見える形で残ります。
しかし、我々はついに、限定条件付きながら、
「乳がん骨転移巣は治せる」
という臨床データを得ましたので、お知らせします。(ニュースは3報起草の予定です。以下は第1報です)。
*********
がんの骨転移があると、骨転移のタイプによりますが、初期には無症状でも、やがて骨に際限のない痛みを生じてきます。中には最末期に、周囲にいる者が正視に耐えられないほど、患者さんが苦しむことがありますので、危険な麻薬の使用が不可避になります。
では、マンディが述べた1997年以降にがん骨転移の治療には進歩があったでしょうか?
筆者が、2016年の日本癌治療学会で、乳がんに関する専門的な学術発表をされた大学の先生に、乳がん骨転移巣の治療法はないかと訊ねたとき、
「エエーッ、骨転移って治らないでしょ!」
と言われたときは、質問した筆者の方がびっくりしました。今でもそうだというわけです。
文献上でも、乳がんで骨転移があった場合、8051症例もの検討の結果、強力な放射線照射をしても、骨転移の痛みを取るためには80%以上で有効だが(Ref. 2)、骨転移巣を根治させることはできないとされています。
しかし、別の大学の先生が
「患者さんはすぐに亡くなることはないのだから、お薬を出しておいて、ちょっと放射線をかけておけばいいのよ。」
と仰られておりましたので、
~ 臨床現場の感覚は随分違うものだな、多くの先生方は、乳がん骨転移をあまり問題視していないのではないか ~
と考えておりました。
しかし、弊社の提携医療機関で、もっぱら乳がん治療を手掛けている因島医師会病院の倉西文仁先生は、前々から違っていました。
「乳がんが骨転移したら、あとはあの世へ電車道だ」
と考えておりましたが、自家がんワクチン投与後 放射線照射を併用することにより臨床的完全奏効(*)となった3症例を経験し、考え方が全く変わったとのことです。
すなわち、どんな治療をしても(放射線、抗がん剤、ホルモン剤、抗体医薬、骨吸収抑制剤を使っても)治せない乳がん骨転移巣があるということは、
「体内に爆弾を抱えているのと同じ」
です。いつ何時、暴れだし、あちこちにがん転移巣を作るのかわからないのです。特に、がんが脳、肺、肝臓等の重要臓器に転移した場合は、確実に余命を絶たれてしまいます。
倉西先生は長期間をかけて119例もの乳がん症例に自家がんワクチン療法を施行してこられましたが、そのうち、骨転移がある乳がん患者さんが20例おられました。
この乳がん骨転移症例について、過去のカルテに遡って確認し、後ろ向き研究として東京大学にあるUMIN臨床試験登録システムに登録した後に(臨床試験番号UMIN000029726を付与されています)、論文を執筆、2017年9月に、
International Journal of Breast Cancer 誌
ジャーナルのホームページ:https://www.hindawi.com/journals/ijbc/
に投稿しておりましたところ、この度、受理されProvisional PDFとして公開されました(Ref.3)。
こちらです → https://www.hindawi.com/journals/ijbc/aip/4879406/
論文タイトルは、
“Rate of clinical complete response for 1-year or more in bone-metastatic breast cancer after comprehensive treatments including autologous formalin-fixed tumor vaccine”
(自家がんワクチンを含む包括的治療を受けた骨転移乳がん患者の1年以上の臨床的完全奏効維持率)」
です。(Provisional PDF版が公開されています → こちらです )
—————-
*注:
臨床的完全奏効(clinical complete response)とは、画像診断等で、全身をくまなく検査し、がんの徴候が何もなくなった場合をいいます。この状態が1年以上維持されている割合を、「1年以上の臨床的完全奏効維持率」と定義しています。
治療局所の組織を採取してがん細胞がいなくなったことを顕微鏡で 確認した病理学的完全奏効(pathological complete response)とは異なります。後者では、治療局所以外の採取しない場所までくまなく病理検査はしませんので、まだどこかに転移したがんが残っている可能性があり、不完全です(Ref. 4)。
また、治癒という用語は、体内から完全にがん細胞が除去された場合を指すとされていますが、この証明のためには、治療後、患者さんを生涯、追跡観察する必要があり、実際には不可能です。そこで、最も治療困難な骨転移巣を含めて、臨床的完全奏効となってから、1年以上の間、再発がなければ「(暫定的に)治ったと言ってよい」、と臨床現場では考えられています(それでも乳がん骨転移の再発がある場合があります)。
ですから、1年未満の奏効では、「役にはたたん」というのが臨床現場での厳しい評価です。
本稿では、この
(臨床的完全奏効と診断されてから)「1年以上の間、再発がなければ(暫定的に)治ったと言ってよい」
という定義を採用しています。
—————-
論文で述べられている結果は、なんと、
20例の骨転移乳がん症例のうち、1年以上の期間、臨床的完全奏効状態を維持できたのが 3例、
すなわち、
1年以上の臨床的完全奏効維持率=15%
でした。
このうちの1例は、トリプルネガティブという最悪タイプの乳がん骨転移でしたが、50ヶ月以上、臨床的完全奏効状態にあります。この方については、(暫定的にではなく、もう)「治った」と言ってよい、と画像診断のプロである放射線科の専門医から同意を得ています。
画像があります
→ 論文に掲載された症例の画像は、弊社のホームページのうち、
乳がんのページの〔症例0406〕〔症例0984〕〔症例2040〕をご覧
下さい。
こちらです → https://cell-medicine.com/cases/nyugan/
自家がんワクチン療法を含まない、「従来の包括的治療法」では、放射線治療を併用していたとしても、乳がん骨転移巣の完全奏効維持率は(1年という期間を待たず)、
「ほとんど0%」(治らない)
とされていたのですから、
15%というのは、従来常識では有り得ない
非常に高い数値です。筆者が調べた限り、現時点で、世界最高成績であることは間違いありません。
しかも、包括的治療法に自家がんワクチンを加えれば(まだ成功率は不十分で、治癒と断言できるのは長期間の観察期間を要するためまだ早いとはいえ)、臨床的完全奏効という意味では、
「乳がん骨転移巣は治せる」と言えるようになったのです。
「乳がん骨転移の治療:振り返ってみれば、世界最高の成績だった-2」
へ続く。
References
1. Mundy GR, Mechanisms of bone metastasis, Cancer, 80(S8):1546-1556, 1997.
2. Falkmer U, Jarhult J, Wersall P, Cavallin-Stahl E. A systematic overview of radiation therapy effects in skeletal metastases. Acta Oncol. 42:620-33, 2003.
3. Kuranishi F, et al. Rate of clinical complete response for 1-year or more in bone-metastatic breast cancer after comprehensive treatments including autologous formalin-fixed tumor vaccine. Int. J. Breast Cancer, in press, 2018.
4. Rose BS, Winer EP, Mamon HJ. Prils of the pathologic complete response. J. Clin. Oncol., 34: 3959-3962, 2016.
【ご案内】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大規模病院の先生方へ:
「混合診療禁止」政策により、大規模病院では「自家がんワクチン療法」が実施できなくても、先生ご自身の患者様に対して、お近くの連携クリニックにて簡単に実施できます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
既に、大学教授で、この連携方式により、ご担当の患者様の自家がんワクチン療法受診を実現されている先生方も何人もおられます。具体的な方法は弊社まで直接お問い合わせください。必要な投資額はわずか30万円前後です。
新たに「自家がんワクチン療法」を自院でも開始したい病院の先生方は、どうか遠慮なく弊社にご連絡下さい。直接説明に伺います。
大病院から小型診療所まで、どこでも簡単に実施可能です。しかも肝がんでは、すでに無作為比較対照臨床試験で有効性が証明されているエビデンスレベルの高いがん免疫療法です。
★“自家がんワクチン療法”は「厚労省への届け出は不要です」★
自家がんワクチンは生きている細胞を含まないため培養不要です。また、組織を再生させるものではなく再生医療等安全性確保法でいう「再生医療製品」に該当しないためです。
**********△▲***▽▼********************△▲***▽▼***********