関東地方は真夏の猛暑が続いております。この暑さでは、健常人でさえ熱中症とは言えないまでも体調不良に襲われても仕方なしかもしれません。
さて、がん患者さんの場合、その日その時の体調の良し悪しは別として、日常生活にかかわる全身状態の指標を設定し、体全体としての機能状態を測ることがよく行われます。
世界的にもっとも良く使われるのは、パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)です。5段階に分けられていて、
PS 0: まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
PS 1: 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行う ことができる。例:軽い家事、
PS 2: 歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、事務作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
PS 3: 限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
PS 4: まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。
となっています。数値が低いほど状態が良いことがわかりますので、がんの化学療法を行う場合(抗がん剤では「がんを小さく」できても、「がんを治す」というのは非常に難しいため)、
体全体の状態をよくすること、すなわち “ステージダウン” がしばしば目標になります。
ただし、このPS評価では荒っぽすぎる、1段階のステージダウンさえ難しいのが現実だ、という意見が古くからあり、もっと細かく指標を設定した方法が多数開発されています。
その中で、脳腫瘍の領域では、カルノフスキー パフォーマンス ステータス(Karnofsky Performance Status、KPS)が良く使われます。
KPSは、上記のPSとは逆に、正常がスコア 100(%)、死亡がスコア 0(%)で、その間、全体で10段階に分けられています。
KPS表示
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正常の活動が可能。特別な看護が必要ない。
スコア 患者の状態
100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし。
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
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労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする。
スコア 患者の状態
70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
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身の回りのことを自分でできない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある。
スコア 患者の状態
40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0 死
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欧米では、脳腫瘍の臨床試験を行う場合、特に脳腫瘍のうちで悪性度の最も高い膠芽腫に対する新規医薬品の治療効果を試験する場合は、
KPS70%以上の方を参加登録するのが一般的です。
それ以下のKPSですと患者さんの状態が悪いとされ、臨床試験に参加できません。
しかし、本邦では、膠芽腫症例の絶対数が少ないこともあって、膠芽腫を対象に実施する臨床試験では、
KPS60%以上の症例を登録するのが常態化しています。
では、このKPS70%以上と60%以上というわずかな差は、試験結果に影響があるのでしょうか。
脳腫瘍において、「自家がんワクチン」による初発膠芽腫の術後再発予防効果が試された本邦の臨床試験(UMIN000001426)では、手術前のKPSが60%以上だった24症例を登録した結果、脳からの膠芽腫摘出手術が行われたにもかかわらず、全体の丁度半数にあたる患者さんで再発してしまい、残りの半数の方が無増悪のままという期間、すなわち、
無増悪生存期間中央値(mPFS)が 8.2ヶ月
でした。このとき、全体の丁度半数の患者さんが死亡し半数が生存しているという期間、
全生存期間中央値(mOS)は 22.2ヶ月
でした。
こちらのホームページの図4に、その生存曲線が表示されています。 → https://cell-medicine.com/cases/results-brain-tumor-drug.php
ところが、この試験の登録症例のうち、欧米なみに、手術前のKPSが70%以上だった患者さんだけ(18例ありました)に絞り込んでみますと、
なんと、
無増悪生存期間中央値(mPFS)は 16.4ヶ月 (丁度2倍)
全生存期間中央値(mOS)は 49.7ヶ月 (2倍以上!)
に延びてしまうのです(Ref.1)。
mPFSはこの論文のresultに記載されていますが、mOSについては論文執筆時点ではまだ半数以上の患者さんが生存しておられたため、
全体では2年生存率が 47%
しかし、KPS70%以上に絞り込むと2年生存率が 60.6%
と記載されています。
KPSのスコアで70%と60%の差は、自分自身に必要なことができていても「ときどき介助が必要」か否かという元気さの差です。
この差の有無が非常に大きく余命に反映されるのですから、自家がんワクチン療法を受けるなら、すこしでも元気なうちがチャンスだと判ります。
もし、患者さん自身や周囲の方々、あるいは主治医の先生が、
“元気なんだから、そんな治療を受けるのはまだ早いよ”
とお考えでしたら、がん治療のための絶好のタイミングを逃してしまうことになりかねません。
どうか、自家がんワクチン療法を始めとするがん免疫療法では、手術後であって、
「少しでも元気なうちこそ、受診のチャンス」
とお考え願います。
Reference
1. Ishikawa E, et al. Phase I/IIa trial of fractionated radiotherapy, temozolomide, and autologous formalin-fixed tumor vaccine for newly diagnosed glioblastoma.
J Neurosurgery 2014 Sep;121(3):543-53. Epub 2014 Jul 4.
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