生命予後のロングテールって何? 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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生命予後のロングテールって何?

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先週、8月25日(土)、昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科学部門の主任教授に就任された角田卓也先生の就任祝賀会が東京にて開催されました。

お祝いの会なので、角田教授自ら今後の抱負を披露されましたが、その中で、がん患者さんの生命予後の変化を描くカプランマイヤー曲線では、従来の化学療法剤ではあまり見られなかったロングテール(先生はカンガルーロングテールと言ってましたが)が、がん免疫療法によって出現するようになった、つまり患者さんが死なないで済むという希望が持てるようになった、という話をされました。

どういうことか、少し解説しましょう。

あるがん患者さんの集団を観察した場合、最初は100%の方が生存しているのですが、時間が経つと亡くなられる方がでてきます。そのため、例えば、1年後では90%、2年後では75%、3年後では40%、、、、、というように生存率が減少していきます。

カプランマイヤー曲線というのは、おおまかにいえば、ある時点の生存率を縦軸に、時間を横軸にとりグラフ化したものです。

ただし、この生存率の計算の仕方に厳密なルールがあり、その発案者の名前をとって、カプランマイヤー法と言われています。観察対象とした患者さんの数が100例以上と多ければ、見た目にはなめらかな減少曲線が描かれますが、少なければガタガタと階段状に下がっていく線になります。

カプランマイヤー曲線は、時間とともに、初めはゆっくり、しかしどんどん右下がりになり出し、やがて直線的に下がっていき、そして下がり方がゆるくなっていくという、逆S字状の曲線になるのが普通です。

このとき、従来の化学療法剤による治療結果では、曲線の後の方の下がり方がゆるくなっていく部分があまり目立たず、下がっていく曲線がいつのまにか0%に(またはそれに近い低い%に)達してしまうというパターンが多くみられます。

すなわち、従来の化学療法剤では、ずーっと長生きできたという患者さんの割合が意外にも低かったのです。

化学療法剤は、大きながんの塊を小さくする能力にたけていますが(がんを小さくできるという効果を基準に選別されてきた薬ですから当然です)、小さく残ったがん塊中のがん細胞まで全部を殺し切れず(根治に成功せず)、投与を続けているうちに毒性が表面化してきて患者さんが耐えきれず、投与を中止するとがん再発と増悪を許してしまい死亡するというパターンを表しています。

ところが、がん免疫療法を施行したときのカプランマイヤー曲線では、「初めはゆっくり、しかしどんどん右下がりになり出し、やがて直線的に下がっていき」というあたりまでは、化学療法剤とよく似た経過をたどります。

(このため、がん免疫療法など全く役にたたん、あんなもんインチキだとがん治療専門医からも散々悪口を言われてきた開発史があります。弊社の自家がんワクチンも長らくインチキ療法扱いを受けてきました。)

しかし、がん免疫療法の結果、カプランマイヤー曲線で、下がり方がゆるくなっていく時期から先に、それ以上生存率が下がらなくなり、そのままずーっと結構高い生存率を維持できた(つまり、がん増悪がストップしたか、がんがすっかり治ってしまった)患者さん集団が現れるようになりました。

このようなとき、カプランマイヤー曲線の裾野は高い状態で長く維持されたままになります。この形がロングテールです

(カプランマイヤー曲線がなだらかに下がっていき、やがてそのまま下がらずに維持される形が、カンガルーの尻尾の形に似ていることからカンガルーロングテールという例えになっています)。

典型的なロングテールの特徴を表すカプランマイヤー曲線が、弊社のホームページの、
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肝臓がん臨床試験(第Ⅱ相後期)のページ
https://cell-medicine.com/cases/results-liver-cancer-final.php
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図2図3にあります。

図2では、肝臓がんの術後で、自家がんワクチンを投与された症例数が少ない(ワクチン群が18例)ため、カプランマイヤー曲線がカプランマイヤー“階段”になっていますが、12ヶ月以降、(図2では)再発した症例がなくなっています。(図3では)死亡した症例もありません(Ref. 1)。

言い換えれば、たった3回(1コース分)しか投与していない自家がんワクチンの効果が、12ヶ月以降も長く(図から読み取れるのは推定で2年以上も)続いているのです。

ロングテールという用語ががん免疫療法の研究者間で使われるようになったのは、悪性黒色腫(メラノーマ)にたいして免疫チェックポイント阻害剤(例えば、オプジーボやヤーボイ)の効果が明かになり、長期フォローアップの論文がでるようになった最近のことです(Ref. 2)。

それに比べれば、肝臓がんに対する弊社の自家がんワクチンの効果を示した論文は、2004年に出版されていますから、世界的にみてもダントツに早い時期だったと言えます。

まさしく、がん免疫療法がうまく行けば長生きできるのですから、自家がんワクチン療法は、決してインチキ療法などではないと、がん治療に係る皆様にも認識していただければ有り難く存じます。

References

1. Kuang M, et al. Phase II Randomized Trial of Autologous Formalin-Fixed Tumor Vaccine for Postsurgical Recurrence of Hepatocellular Carcinoma. Clin Cancer Res, 10: 1574-1579, 2004.

2. Harris SJ, et al. Immuno-oncology combinations: raising the tail of the survival curve. Cancer Biol Med 2016;13:171-193.

注:弊社は病院やクリニックではなくバイオ企業であるため、症例報告や論文内容のWeb掲載は許容されています。

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