がん免疫反応の根本原理の一つを解明、ノーベル賞に 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

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がん免疫反応の根本原理の一つを解明、ノーベル賞に

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今年のノーベル賞のうち、医学・生理学賞が、本庶佑・京都大特別教授に授与されることが決定され、昨日発表されました。

本庶先生、誠におめでとうございます。

多くのメディアで報道されていますように、超高額医薬品として何かと話題となってきた、がんの抗体医薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の開発につながった原理の発見が、今回の受賞の根幹になっています。

すなわち、細胞性免疫反応では、体内で「敵/異物/不要とみなした相手」の細胞を排除するメカニズムが働きますが、それが過剰に作動して、自己の正常な生理機能まで破壊しないよう、ブレーキをかけるシステムを備えています。

その一つが免疫チェックポイントと呼ばれるもので、免疫反応の司令塔役をはたす樹状細胞では主にCTLA-4分子が、リンパ球のうちキラーT細胞では主にPD-1分子が、その役割を担います。

どちらの分子も、活性化すれば細胞内に停止信号を送り出し、樹状細胞の活動停止を通じてT細胞の活性化を停止するか、あるいは直接T細胞の活動を停止させます。

結果的にキラーT細胞の暴走をストップさせるのですが、重要なのは、CTLA-4分子に抗体を作用させてCTLA-4分子が働かないようにしても、樹状細胞がキラーT細胞を活性化させる作用を阻害しないこと(Allisonが1996年に証明、Ref. 1)、あるいは、PD-1分子と結合するがん細胞側分子PD-L1に抗体でフタをしてPD-1分子に結合しないようにして働かないようにしても、キラーT細胞によるがん細胞を殺す作用を邪魔しない(本庶研より、2002年に報告、Ref. 2)という点です。

(2018.10.18追記:もちろん、PD-1分子と結合するがん細胞側分子PD-L1ではなく、PD-1分子に直接フタをしてPD-L1分子に結合しないようにしても(この作用がオプジーボの作用です)、遺伝子操作によってPD-1分子をノックアウトしたマウスでも、キラーT細胞によるがん細胞を殺す作用を邪魔しないことが証明されています。)

抗CTLA-4抗体である医薬品ヤーボイ、抗PD-1抗体である医薬品オプジーボの開発も非常に重要ではありますが、これらの開発の根幹をなすこのような原理の発見が、Allisonとともに本庶先生にノーベル賞を授与されたことの本質をなしています。

ただ、いずれの抗体医薬の作用も、免疫反応のブレーキをはずす、という作用です。

それに引き替え当社の「自家がんワクチン」は、免疫反応のアクセルを踏む、という全く逆方向の作用によって、がん細胞を積極的に殺すようにキラーT細胞を活性化させるため、別の意味で非常に有用なのです。

References

1. Leach DR, Krummel MF, Allison JP. Enhancement of antitumor immunity by CTLA-4 blockade. Science. 1996;271(5256):1734-6.

2. Iwai, Y., Ishida, M., Tanaka, Y., Okazaki, T., Honjo, T. and Minato, N. 2002. Involvement of PD-L1 on tumor cells in the escape from host immune system and tumor immunotherapy by PD-L1 blockade. Proc. Natl Acad. Sci. USA 99:12293.

 

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