皆さま、
明けましておめでとうございます。
旧年中は、がん免疫療法に関するこのセルメディシンニュースをお楽しみいただけたことと存じます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、読者の皆さまは、標題のとおり、「がんの放射線治療は、実はがん免疫療法にもなっている」ことをご存じでしょうか?
皆さまは、がんを放射線で治療したとき、がんが小さくなるのは放射線が直接がん細胞を殺すからだ、と思い込んでおられませんか?
その考え方、一部は正しいが大部分は間違っている、と言われたらどう思われますか?
筆者が今回の標題と同レベルの内容を当社から発信したのは、
2007年10月30日付のドクター通信No.107
「放射線治療にも細胞性免疫反応が必要」
という記事でした。
これは、第45回日本癌治療学会(2007.10.24-26、京都)の
. シンポジウム7「癌免疫療法の現状と展望」
. S7-3、「DCおよびT細胞治療の現状と展望」
で、(当時・北大の)西村孝司先生が、マウス実験ながら、あらかじめCD8(+) T細胞を特異抗体で体内から除去しておくと、放射線治療が無効になってしまう、というデータを示されたからです。
それから7年、2014年1月30日には、セルメディシンニュースNo.198
「がんワクチンと放射線治療の併用はタイミングが大切です」
((Ref. 1を引用して)骨髄を破壊しない程度の弱い放射線照射をマウスに行い、24時間後に免疫療法(DNAワクチン注射、T細胞治療、またはその両者)を行うのが最も効果的で、まる2日以後では、体内で免疫反応を抑え込む制御性T細胞が相対的に増え、免疫療法の効果がなくなっていくと報告しています)
を発信しています。
そして、昨年12月の第31回日本バイオセラピィ学会
(2018.12.13-14、東京)ランチョンセミナー2、
. 「免疫放射線治療(Immuno-Radiotherapy)の理論的背景と現状・未来」
の講演で、
. 福島県立医科大学医学部 放射線腫瘍学講座
. 鈴木義行先生
は、
「普通のマウスにがん細胞を移植して作成したがんは、放射線治療で治せるが、免疫不全マウス(遺伝的に免疫細胞が作れないマウス)にがん細胞を移植して作成したがんは、放射線治療で治せない」
と発表されました。
この事実は、がんに放射線を照射したとき、がん細胞を殺しているのは、実は放射線照射で活性化した(免疫不全マウスにはなく、普通のマウスにはある)免疫細胞であることを示しています(Ref. 2)。
これまでの大学教育では、「放射線治療とは、放射線でがんを焼くことだ」と、まるでドグマとして教えられてきたものですが(かくいう筆者も、簡潔な表現として、未だにときどきこのように教えています)、それは事実であっても、放射線によるがん治療効果全体を見直してみると、一部の効果にすぎません。
放射線照射後にがん細胞を殺す免疫細胞(特にがん局所にいるキラーリンパ球)が重要で、がんの放射線治療効果の大部分は免疫細胞に依存しているのです。
この効果について、別種の証拠として挙げらているのに(まれではありますが)原発巣の放射線治療により、全く放射線があたっていない部位にある転移がんが消滅するという、「アブスコパル効果」があります。
原発巣の放射線治療の際に体内で活性化された免疫細胞が全身をめぐるため、転移巣のがん細胞も殺してしまうためだと説明されています。
ということは、放射線治療に重ねて、積極的にがん免疫療法を施行すれば、難治性のがんでも治せる可能性が高まることを示唆しています(Ref. 2)。また、「アブスコパル効果」を増強することも可能になります(Ref. 3)。
放射線治療はがん局所に限定された治療法だと理解されてきましたが、積極的にがん免疫療法を重ねれば、抗がん剤治療のような全身療法になる可能性が高いのです。
実際に、当社も参加した日常診療における乳がんの骨転移症例の治療では、
あらゆる治療法でも治らないのが常識
(もちろん抗がん剤でも、放射線治療単独でも、これらを組み合わせても無理)
とされてきた乳がんの骨転移でさえ、
「自家がんワクチン療法」を、
放射線治療その他に重ねた場合、完治したと判断された症例がでています(Ref. 4)。
また、他の乳がん骨転移症例も含めて、20例中、臨床的完全奏功状態
(放射線照射した骨転移の部位だけではなく、転移乳がんが全身で全く見つからない状態)
を1年以上保った症例が15%も出現しています(Ref. 5)。
これは、かつて報告されたことがない世界最高の成績です。
読者の皆さま、及び、ご関係の皆さまには、どうか、
・がんの放射線治療を受けられる場合は、積極的ながん免疫療法の同時併用を、
また逆に、
・がん免疫療法を受けられる場合は、後からでも積極的にがんの放射線治療ができないか、
ぜひ前向きに(重い副作用なく、現代の最先端治療を受けられることになりますので)、今かかっている主治医の先生とともにご検討をされますよう、お願い申し上げます。
References
1.Diab A, et al. Enhanced responses to tumor immunization following total body irradiation are time-dependent.
PLoS One. 2013 Dec 12;8(12):e82496. doi: 10.1371/journal.pone.0082496.
2.鈴木義行、放射線治療と腫瘍免疫 ~免疫放射線治療
(Immuno-Radiotherapy)の可能性~、W’Waves 2015;21:31-34.
3.Naga W, et al. Using immunotherapy to boost the abscopal effect.
Nature Reviews Cancer 2018;18:313-322.
4.Kuranishi F, Ohno T. Eradication of breast cancer with bone metastasis by autologous formalin-fixed tumor vaccine (AFTV) combined with palliative radiation therapy and adjuvant chemotherapy: a case report.
World J Surg Oncol 2013, 11:127. doi: 10.1186/1477-7819-11-127
5.Kuranishi F, et al. Rate of Clinical Complete Response for 1 Year or More in Bone-Metastatic Breast Cancer after Comprehensive Treatments including Autologous Formalin-Fixed Tumor Vaccine.
Int J Breast Cancer, 2018;article ID 4879406, 11 pages.
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自家がんワクチンは生きている細胞を含まないため培養不要です。また、組織を再生させるものではなく再生医療等安全性確保法でいう「再生医療製品」に該当しないためです。
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