ある患者様から、ネオアンチゲンに関するお問い合わせがありましたので、ここに回答を記載しておきます。
【問合せ】
最近、自分のがん組織を利用した免疫療法の1つとして 「ネオアンチゲンワクチン療法」という治療法が始まっていますが、自家がんワクチン療法と比べた場合はどうでしょうか。
【ご回答】
一般に、ネオアンチゲン療法は、まず患者様のがん組織を遺伝子解析し、正常な細胞と異なっている部分(変異遺伝子)を特定します。その遺伝子から作られるタンパク質(既知がん抗原であるアンチゲンに対して新規のためネオアンチゲンと呼びます)のアミノ酸配列から、コンピューターで推定した、がん抗原となるであろうというネオアンチゲンペプチド部分を、体外で培養している樹状細胞に与え、体内に戻すという操作をします。
そこから体内のキラー細胞にがんのネオアンチゲンを教え、がんを攻撃させる治療法です。
メリット:
ネオアンチゲン療法は、本来は体内にないネオアンチゲンペプチドを使用して樹状細胞を教育しますから、樹状細胞からさらに教育を受けたキラーリンパ球は、ネオアンチゲンペプチドを表面に提示しているがん細胞だけを攻撃するようになりますので、がん細胞を殺せる効率が高くなると信じられています。
デメリット:
遺伝子の突然変異によってできるため、患者様一人一人のネオアンチゲンは異なります。どんなネオアンチゲンができているのかは全く不明なため、
(1)患者様のがん組織で、すべての発現している遺伝子を解析して明らかにしなければならず、この作業はたいへんです。患者様の生のがん組織が必要とされています(病理切片からでも可能と言われていますが、まだ技術的に難しく普及はしていません)。
(2)しかも、その遺伝子解析から、できているはずのネオアンチゲン候補となるタンパクを推定し、さらにそこからネオアンチゲンペプチドの候補を、患者様一人一人の遺伝子型(ヒトではHLAタイプと呼びます)に合わせて選び出す膨大な作業が必要になります。高速コンピューターの助けを借りないと、なかなかできるものではありません。
(3)候補のネオアンチゲンペプチドを合成し、
(4)それを患者様自身の血液から取り出して培養している樹状細胞に与える工程が必要です。培養には完全無菌でできる高額な施設と高度の培養技術が必要です。
(5)さらに、その生きている樹状細胞を投与しても、体内でキラーリンパ球を活性化できるかどうかは不明です。
これだけ面倒な工程を経る必要がありますので、おそらくすべてのネオアンチゲンを含んだワクチンの作製は無理と思われます。そのため、その内の効果のありそうな数種類を使用すると思われます。
以上から、たいへん高額な治療法になってしまうことは、簡単に想像できると思います(全体の治療を細かくわけて1回の治療費を安く設定しても、繰り返し数が多くなると結局は高額な治療になります)。
一方、「自家がんワクチン」は患者様のがん組織をそのまままるごと原材料に用いておりますので、当然ながら、がん抗原となり得るタンパクも、その中のがん抗原ペプチドも全部含まれているはずです。
実際、ホルマリン固定した上にパラフィン(ろうそくのロウのことです)に埋め込んだ脳腫瘍組織でも、WT1やサバイビン等、既知の著名ながん抗原が含まれていることが、弊社独自の検査によって判明しています。
従って、原理としては当然ながら、同じがん組織の中ですから、全てのネオアンチゲンも含んでいると考えられます(ただし、そのがん組織が手術で取り出された時点の全てのネオアンチゲンです)。
そして、上記の(1)~(5)のような面倒な工程は必要ではなく、患者様の樹状細胞の培養もしません。単純な製造工程で済みますから、相対的には安価になっています。
ただし、手術後に患者様の体内でがんが再発し、そこに発生した新規のネオアンチゲンがあるとすれば、それは除外して考えなければなりません。
そのため、自家がんワクチンを製造するときは、できれば、最新の手術で取り出されたがん組織を原材料にするのが望ましいのです。
ただし、ネオアンチゲンだけではなく、既知の著名ながん抗原も抗原として利用できますので、最新の手術で取り出されたがん組織がない場合は、数年前の手術で取り出されたがん組織でも、有効利用が可能です。
ネオアンチゲンだけではなく、既知のがん抗原も含めて、““総動員””できる、がん組織まるごとを有効利用する、
安価な「自家がんワクチン療法」
を、ぜひご検討願います。
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★“自家がんワクチン療法”は「厚労省への届け出は不要です」★
自家がんワクチンは生きている細胞を含まないため培養不要です。また、組織を再生させるものではなく再生医療等安全性確保法でいう「再生医療製品」に該当しないためです。
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