つい先週、10月24日から26日まで、第57回日本癌治療学会が、福岡にて開催されました。この学会はがんの治療に携わる医師が日本中から集まる日本では最大規模の学会です。
今回のトピックは、免疫チェックポイント阻害剤・キイトルーダの
「臓器横断的使用」
(がんの種類を気にしないで治療に使うということ)
でした。
ある種の条件、すなわち、その方のがんが、
遺伝子検査の一つで、
マイクロサテライト不安定性
(MSI:microsatellite instability)
が非常に高い、
という条件にあう患者さんでは、どんな固形がんであってもキイトルーダを処方してよいという、臓器横断的使用が2018年12月に承認されたからです。
しかし、一通りの「標準治療(抗がん剤治療)」を受けた後の方(要は、抗がん剤が効かなかった方)が処方の対象です。
処方する前に、がんの遺伝子に異常があるという条件に合うかどうかを調べるため、検査をしなければなりませんが、実はそのために健康保険が使えるのは、一回だけという制限があります。
では、いつの時点で遺伝子検査を行い、キイトルーダ治療を始めればよいのか、全てのがん種で議論を起こしている様子でした。
そんな面倒な議論なんかしなくても、強烈な副作用がある抗がん剤(ほとんどが毒物/劇物に指定されています)を使わずに、最初からキイトルーダを使ったらいいじゃないか、という意見は世界中であります。
しかし、そうはいかないのは、もし免疫療法が全く効かない患者さんに当たってしまうと、抗がん剤を使わない場合、がんを野放しにするのと同じになってしまいますから、がんがどんどん悪化してしまいます。
単純に最初からキイトルーダを使えばよいとはいかないのです。
どうやって、効く患者さんをいつの時点で見分け、効かない患者さんを避けるかが、まさしく医師の腕の見せどころになります。
今回の学会のなかで、
スポンサードシンポジウム8
がん免疫療法におけるPrecision Medicineの
将来展望
の際に、
【講演2】腫瘍抗原の観点から
[演者] 武藤 学
(京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学講座)
では、
どのタイミングで遺伝子検査を行うのが望ましいかという話題で、
—–
. ①標準治療不応後
. ②抗がん剤治療前
. の二つの選択肢があるかと思うが、
. 会場の皆さんはどちらのタイミングで受けたいですか?
—–
という質問を投げかけていました。「会場の皆さん」とは、ほとんど全員、がん治療医です。
その結果は、驚いたことに、
—–
. ①で挙手した聴衆は皆無、
. ②で8割ほどの聴衆が挙手、
—–
だったのです。
先生方の手ごたえとしては、遺伝子異常が中程度以上見られている患者であれば、抗がん剤治療の後ではなく、最初からキイトルーダを使用してもよい、10%位の患者さんで効果がありそうだと思っているとの事でした。
がん治療医でさえ、
. 「抗がん剤治療後よりも、抗がん剤開始前に免疫療法をするのがよい」
そのために、
. ・がんの遺伝子検査はさっさと行うべきだ、
と考えているのです。
上に述べた、
. ・一通りの「標準治療(抗がん剤治療)」を受けた後の方(要は、抗がん剤が効かなか
った方)が処方の対象、
という健康保険を使うための規定を、はたして墨守する意味はあるのでしょうか?
むしろ、ほとんどのがん治療医の考え方に従い、
. ・先にがん免疫療法を(遺伝子異常が中程度以上ある患者さんでは)実施し、
. ・運悪く効かなかったときに、標準治療(抗がん剤治療)を行う、
という、現在の治療順とは逆順にした方がよいと思われます。
(もちろん、超高額なキイトルーダの乱用を避けるために、事前検査はしっかり行い、10%位の患者さんではなく、せめて50%以上の高い割合で効果がある患者さんを選別する必要があります。)
自由診療である「自家がんワクチン療法」でも、もし可能ならば、キイトルーダの場合と同じように、がんの手術後に、すぐに抗がん剤治療を行うよりも、
・先に自家がんワクチン療法を受診
していただければ、抗がん剤による強い副作用を避けることができます。
強烈な副作用のある抗がん剤治療は、
. ・運悪くがん免疫療法が効かなかったときに(やむを得ず)行う
それでは手遅れになることが心配な向きには、
. ・同時併用でもよいが、免疫療法には影響しないレベルの、副作用のない低用量で抗がん剤治療を行う
. (例えば、通常用量の1/3以下で、がんの増大をかろうじて抑える程度にとどめ、がんを縮小させるのは、免疫療法側に任せる)
ということではいかがでしょうか?
このような低用量の抗がん剤治療は、
・東京では、銀座並木通りクリニック
. (TEL: 03-3562-7773)
・大阪では、堂島リーガクリニック
. (TEL: 06-6225-8231)
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