正常細胞に遺伝子変異が生じるのはよくあることです。それがたまたま無限に細胞増殖をさせてしまう遺伝子変異であった場合、正常細胞ががん細胞になっていきます。
我々の体内では、毎日数千個ものがん細胞が発生していると言われていますが、
「それでも多くの人はがんにならないのは、体の中の「免疫監視機構」が働いて、がん細胞を殺しているからだ。」—–バーネット(1960年のノーベル賞受賞者)
というのが通説です。
「免疫監視機構」の実態は非常に複雑ですが、そのエッセンスを簡略化して言えば、
. ・がん抗原を取り込む樹状細胞
. ・その情報を受け取るヘルパーT細胞
. ・ヘルパーT細胞に助けられて活性化して、がん細胞を殺すキラーT細胞
の連合軍です。
ここで樹状細胞に取り込まれ、“がん抗原”としてその細胞表面に提示されるものには、
. ・もともと体内にあるが普段はあまり目立たない変わり者タンパク由来のがん抗原ペプチド
. ・もともと体内にはない変異遺伝子から出来てきた異常タンパク由来のがん抗原ペプチド
があると考えられています。
後者が、体にとっては新参者なので、
. “ネオアンチゲン”
といいます。
ネオアンチゲンは、もともと体内になかったものですから、
. ・免疫反応を惹起する抗原になりやすく、
. ・従ってキラーT細胞が発見しやすい目印となり、
. ・ネオアンチゲンを細胞表面に提示しているがん細胞は殺されやすいはずだ、
. ・だから、ネオアンチゲンとなるがん抗原ペプチドを大量に合成して体内に投与すれば、
. がんを治せるだろう、
というのが、現在のネオアンチゲンを用いたペプチドワクチン(ないし、ネオアンチゲンを搭載した樹状細胞ワクチン)の理論的バックグラウンドになっています。
(2019.09.24)発信のセルメディシンニュースNo.374に書きましたが、
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一般に、ネオアンチゲン療法は、まず患者様のがん組織を遺伝子解析し、正常な細胞と異なっている部分(変異遺伝子)を特定します。その遺伝子から作られるタンパク質のアミノ酸配列から、コンピューターで推定した、がん抗原となるであろうというネオアンチゲンペプチド部分を、体外で培養している樹状細胞に与え、体内に戻すという操作をします。そこから体内のキラー細胞にがんのネオアンチゲンを教え、がんを攻撃させる治療法です。
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〔トピックス〕としては、→ こちらに掲載
ネオアンチゲンの発見と応用は、がん分野では現在流行中の最先端研究テーマで、ここ数年、世界的に大量の研究資源が投入されています(莫大な研究費はもちろん、多数の研究人員も、膨大な遺伝子解析データも、スーパーコンピューターも)。
それでも意外なことに、ヒト臨床で赫々たる治療成績の報告があまりないことが、筆者は気になっていました。
その主因は不明のままですが、微々たる理由であれ、もしかしたらこれがあるがために臨床での研究が進まないのではないかと考えられる原因が、最近発表された論文中に見いだされました(Ref.1)
この論文では、いろいろなタイプの固形がん患者22例に、一人一人の患者の遺伝子解析により独自に発見したネオアンチゲン候補である抗原ペプチド(長さ15-35アミノ酸鎖)を5-20種(1ペプチド当り0.1mgまたは0.3mg)まとめたプールを、間隔をおいて計7回以上、樹状細胞を使わず、直接免疫アジュバントとともに皮下注射しています。
このうち、2例(9.1%)で、6回以上投与した時に、重篤な急性アレルギー反応(有害事象でいうグレード3-4のacute allergic reaction)、いわゆるショック症状を起こしたというのです。
この試験で使用された抗原ペプチド量は、1回の注射で投与する1ペプチド当り0.1mgまたは0.3mgですから、個々のペプチドで見れば決して多くはありません。しかし、5-20種のプールで見ると、相当の大量投与となっています。
患者にとって、命を落とす可能性がある極めて危険なショック症状をきたしたという点は、もしかしたらネオアンチゲン抗原ペプチドを用いたこれまでの(未発表の)臨床試験でもあったのではないかと考えさせられます。また、今後のネオアンチゲン療法開発に急ブレーキがかかるであろうと予想させるにも十分なものなのです。
Reference
1.Fang Y, Mo F, Shou J, Wang H, Luo K, Zhang S, Han N, Li H, Ye S, Zhou Z, Chen R, Chen L, Liu L, Wang H, Pan H, Chen S.
A pan-cancer clinical study of personalized neoantigen vaccine monotherapy in treating patients with various types of advanced solid tumors.
Clin Cancer Res. 2020 May 21:clincanres.2881.2019. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-19-2881. Online ahead of print.
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