がん治療に限らず、医薬品の安全性は、本来の作用とは別の副作用とその強さの程度で記録されていきます。
旧来の低分子抗がん剤の副作用のひどさは、つとに知られているところですが、それでもがん治療効果とのバランスを見て、許容できる範囲なら、国の承認が出て市販され、広く使われていくことになります。
例えば、サリドマイドについては(本邦では1958年に睡眠薬イソミンや胃腸薬プロバンMとして発売されましたが)妊婦が服用した場合にはサリドマイド胎芽症(奇形児)が生まれるという、世界規模のサリドマイド事件を起こし、1962年9月に販売停止にされました。
それほど危険なものでありながら、サリドマイドは、多発性骨髄腫(骨髄がん)に有効だと判明したことから、日本でも2008年サレドカプセルの商品名で再承認され、市販されています。
これからわかることは、胎児に対する副作用があるかないかは、その医薬品の運命を決定するほどの安全性に関する最重要事項であることです。
また、それでもがん治療に役立つならば、危険を冒してでもがん治療に使うものであるということです。
この点、弊社の自家がんワクチンについては、これまでに3000例以上の投与実績があるために、ヒトにおける一般的な安全性データの蓄積があり、重い副作用問題はないことがわかっておりましたが、妊婦と胎児に対する副作用については全く不明でした。
ところがつい最近、自家がんワクチンを投与した乳がんの患者様で、母体にも胎児にも副作用問題が全然なかったという症例が出現しましたのでご紹介します。
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〔症例3116〕 よろずクリニック
2018年9月にステージ1の浸潤性乳管がんと診断され、「左乳房部分切除+センチネルリンパ節生検」
を施行。温存乳房照射、「補助化学療法+内分泌療法」を勧められたが、2018年10月に結婚、妊娠希望
であったため放射線治療のみを選択、2018年12月自家がんワクチン療法を1クール終了後、翌年1月末
より計25回放射線治療実施(計50Gy照射)。
・2019年6月に妊娠が判明するも、乳がん再発傾向は無し。
・2020年1月、無事に女児出産。
母子ともに2020年11月現在も経過良好。
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なお、まだわずか1例にすぎませんので、ご参考までにとどめおき願います。
この方の場合、自家がんワクチン療法を受ける前に、元の主治医に勧められた「補助化学療法+内分泌療法」を断っています。
もし勧められた治療法を受けて、なおかつ出産を希望する場合は、抗がん剤治療開始前に、手術で母体の卵巣から未受精卵を取り出して凍結保存しておき、乳がん治療後に未受精卵か体外受精卵を母体に戻すという、たいへん複雑で、母体の負担も大きくかなりの危険をともなう高度技術を必要とします。
それに比べれば、自家がんワクチン療法は、妊娠前に母体に対して注射をするだけという簡単さです。
今後、妊娠・出産をご希望の患者様にとって、この症例報告が参考になれば幸いです。
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