健康診断で見つかるようなまだ無症状の大腸がんで、発見されたときにはリンパ節や肝臓等に遠隔転移があると、ステージIVの進行がんと診断されます。
この場合、
「手術して原発巣の大腸がんを切除してから抗がん剤治療を行った方がよい」
という意見と、
「大腸を手術しても遠隔転移は治せないのだから手術は無駄ですぐに抗がん剤治療を開始した方がよい」
という2つの意見が長らく対立しておりました。
しかし、ASCO(米国臨床腫瘍学会)から先週4月16日に発信されたニュースによれば、本邦の国立がん研究センターを中心とするJCOGグループが欧米に先駆けて第III相臨床試験を実施、ついにこの議論に決着をつけたとのことです(出たばかりの論文はRef. 1です)。
この試験では、2012年6月から2019年9月の間に165例を登録、
———————–
「抗がん剤治療のみ」(chemo-alone群)
と、
「先に手術→後から抗がん剤治療」(primary tumor resection(PTR)群)
———————–
にランダムに割り付け(盲検下ではなく)それぞれの群に治療を行いました。
なお、ここで行われる手術は、遠隔転移巣まで完全切除はできませんので、とりあえず増悪抑制を図るための(全部はとれない)「姑息的手術」となります。
ここで採用された抗がん剤治療は、大腸がんには標準的に使用される、
. mFOLFOX6療法
(フルオロウラシルとL-ロイコボリンを組み合わせた治療に、オキサリプラチンを同時併用する治療)
または
. CapeOX療法(XEROX療法ともいわれる。カペシタビンとオキザリプラチンを組み合わせた治療)
です。
どちらも劇薬とされている低分子抗がん剤を組み合わせた化学療法で、強い副作用(特に白血球を激減させる)があります。
このうち、登録適格だったとされた160例を対象にして、全生存期間(OS)を計測したところ、両群に全く差が見られなかったため、試験自体が中間解析段階で打ち切りとなってしまいました。
結果は、OS中央値で表すと、
. chemo-alone群:26.7ヶ月(95%CI, 21.9-32.5ヶ月)
. PTR群: 25.9ヶ月(95%CI, 19.9-31.5ヶ月)
. (p=0.69)
となっており、統計学的にはピッタリ重なっていると言えるほど近い値です。
ここまで見事なデータを示されれば、今後、全世界でも、無症状大腸がんで遠隔転移有りの患者では大腸がんの原発巣摘出手術が行われなくなるだろうと予想されます。
しかし、はたしてそれだけで良いのか、というのが筆者が考え込んでしまった点です。
というのも、上記のような無症状ではない、はるかに増悪していて多発転移もあるステージIV症例で、大腸がんの姑息的手術後、標準的な化学療法を受けたにもかかわらずがん部が増大、肺転移も出現した方に、自家がんワクチン療法と放射線治療を追加した結果、腫瘍マーカーが大幅に減少、
放射線が“当たっていない”肺転移巣まで消失し、5年以上無再発生存中という症例を弊社では経験しているからです。
→ https://cell-medicine.com/cases/daichogan/
にある
〔症例0994〕 (因島医師会病院)
の図をご覧ください。この症例については学術論文も発表されています(Ref. 2内のケース2)。
先週出たばかりの論文(Ref. 1)では、大腸がんの姑息的手術は意味がない、とされてしまいましたが、それだけでは、標準的な化学療法が効かなくなった場合に(あるいは、よく起こることですが、強い副作用のために継続不可能となった場合に)、姑息的手術であれ、体から取り出したがん組織があれば、抗がん剤の強烈な副作用に苦しむことなく、「次の一手」が打てることを、〔症例0994〕は示しているのです。
References
1. https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.20.02447
Kanemitsu Y, et al.
Primary Tumor Resection Plus Chemotherapy Versus Chemotherapy Alone for Colorectal Cancer Patients With Asymptomatic, Synchronous Unresectable Metastases (JCOG1007; iPACS): A Randomized Clinical Trial.
J Clin Oncol (2021) 39:1098-1107.
2. https://link.springer.com/epdf/10.1186/s12957-017-1245-x?author_access_token=uG4hIrcnMMae5LgX19bim2_BpE1tBhCbnbw3BuzI2RNjlAHzAZ_xfTX3hcUI-0Mi7CeqY2b2tRqx8Ou2MuQh8U10LZsRzy8tZj9sxB6sbloc0M5RvDUlawP4J44yLkaxGOz054KNcSRBifm02urzLw%3D%3D
Imaoka Y, et al.
Long-lasting complete response status of advanced stage IV gall bladder cancer and colon cancer after combined treatment including autologous formalin-fixed tumor vaccine: two case reports.
World J Surgical Oncol (2017) 15:170. DOI 10.1186/s12957-017-1245-x
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