第39回日本脳腫瘍学会学術集会が神戸市の有馬グランドホテルにて、12月5日~7日に開催されました。ここで筆者が最も感嘆した最新の検査技術を紹介します。
第1日にあった講演、
S1-7 次世代機械・深層学習アルゴリズムを用いた尿リキッドバイオプシーの早期診断技術
(名古屋大学 未来社会創造機構 夏目 敦至 他)
です。
この発表では、シリコン基板上にナノワイヤ(酸化亜鉛ナノ構造体)とマイクロ流路を組み合わせたデバイスで、がん細胞のエクソソームに由来する尿中miroRNAをトラップし、尿1mLから1300種以上のmicroRNAを検出できるようにしたというのです(Ref.1、2)。
そのうち、AIを利用して重要ではないmicroRNAを除外、重要と思われる機能未知のmicroRNAの配列を解析、発見した脳腫瘍特異的microRNAを利用して、脳腫瘍診断率と感度を、それぞれ91%、85%にしたと発表しています。
なお、名大のプレスリリース:
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/ACS_App_Mat_210402.pdf
では、99%の正確度 (感度 100%、特異度 97%)で脳腫瘍を診断できることを世界で初めて発見したとしています(ちょっとオーバーラン気味だったかもしれません)。
この名大のグループは、すでにベンチャー企業CRAIFを設立していて、ビジネスを展開しています。
CRAIF社では2022年からこの検出装置を貸出し、市販はその後に行うそうです。
この画期的な成果を利用すれば、弊社が参加している医師主導治験第III相試験
「Cellm-001による初発膠芽腫治療効果無作為比較対照試験」
に参加した生存者から尿を収集し、その患者さんが未だ脳腫瘍を持っているか、根治したかが判明するでしょう。
すごい時代に入ってきたものと思います。
References
1. Yasui T, et al.
Unveiling massive numbers of cancer-related urinary-microRNA candidates via nanowires.
Science Adv. 3:e1701133(2017)
2. Kitano Y, et al.
Urinary MicroRNA-based Diagnostic Model for Central Nervous System Tumors Using Nanowire Scaffolds.
ACS Apple Mater Interface 2021;13:17316-17329.
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