肥満と病気の関係については、長らく認識されていて、肥満と発がんの関係についても例外ではありません。
例えば、こちらのサイト ↓
https://www.kumachu.gr.jp/department/other/nutrition/bmi.php
では、非常にわかりやすい解説がされていて、肥満が引き金になる「メタボリックドミノ」の図が参考になります。
その図の直下の「肥満とその他の病気との関連」の項では、
*—————
肥満があると…(中略)…大腸がんや前立腺がん、乳がん、子宮がん、肝臓がんなど、多くのがんのリスクを高めることも指摘されています。
*—————
と明記されています。
しかし、肥満の尺度(Body Mass Index, BMI, がよく使われています)と大腸がんの発症リスクとの間では、きれいな相関関係があるわけではなく、かなりあいまいなため、もっと強い相関関係がある尺度が求められていました。
この問いに答えたのが、先月発表されたLiらの論文です(Ref. 1)。
BMIは、体重(kg)/[身長(m)の2乗]で表されますが、この値が18.5~25.0が標準的な体形とされていて、25.1以上が肥満とされています。
例えば、身長1.7mの人なら体重73kgではBMIが25.26になりますから太り気味というわけです。身長160cmでは体重64kgが肥満の境界線です。
Liらは、過剰BMI(excess BMI, eBMI)を「BMI-25」と定義し、これが何年続いているかを累積した尺度を考案しました(Ref. 1)。
累積肥満度を、
years x eBMI = WYOs
(Weighted number of Years lived with Overweight or Obesity)で表したのです。
これを大腸がん患者(5635人)と対照正常者(4515人)で比較しました(ドイツで、2003-2017年間に追跡調査しています)。
その結果、eBMIと大腸がん発がんリスクの相関関係よりも、WYOsと大腸がん発がんリスクの方が強い相関関係があることが明らかになったのです。
この研究の特徴は、時間的にみてピンポイントで測定するBMIと発がんの関係を解析するよりも、肥満が作用する時間の長さを取り込んだ累積効果を測定尺度に取り込んでいる点にあります。
これは発がんに対する肥満の効果の研究ですが、丁度この裏返しで、既にできているがんに対する新薬の治療効果を測定する場合も、ある時点で単にがんが小さくなればよいというものではなく、がんが悪さをしない期間をどのくらい長く維持できるか、という視点が重要です。
つまり、がん治療効果をピンポイントで診るのではなく、患者さんのライフタイム全体で診るという視点が必要なのです。
そのような意味では、がん治療における抗がん剤は「がんを縮小させる」(奏効率で現すことが多い)という強い効果がありますが、奏効率ではその効果の持続性を現す点で弱点があります。
抗がん剤は、強い副作用が出やすいために投与を続けられなくなることがしばしばあります。投与を止めると急速にがんが大きくなってくる場合が非常に多くみられるからです。
一方で、弊社の自家がんワクチンのようながん免疫療法では、既存のがんの縮小効果が弱くても、がんの増殖スピードを抑え込み、結果的に長い延命効果をもたらす場合が多く見られます。
読者の皆様には、発がん効果を考えるときも制がん効果を考えるときも、ぜひ、効果が続く長さ(累積時間)という視点を取り込んでいだたければ幸いです。
Reference
1. Li X, et al.
Risk of Colorectal Cancer Associated With Lifetime Excess Weight.
JAMA Oncol. doi:10.1001/jamaoncol.2022.0064
Published online March 17, 2022.
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