本邦の医療法では、国の未承認医薬品であっても、医師の裁量により、その医師自身の患者に処方し、投与することができます。
ただし、この場合、健康保険は適用されませんので、自由診療(患者さんの全額自費負担による診療)となります。
極端な例でいえば、ごく普通のビスケットをもってきて、
「これに含まれている成分は貴方の病気によく効くはずだと考えられていますから、服用してみてください。」
と説明し、患者さんが同意したら、
そのビスケットを未承認医薬品として有料(価格設定は自由)で処方し、服用してもらう
ことができます。
(この極端な例は、筆者が2002年1月に、厚労省医薬局監視指導麻薬対策課で、「医師の責任の範囲内で医療行為の一環として食品を使用することも問題にされていないので、未認可医薬品相当の物質には、食品の場合と同等の考え方が適用できる。」
と、担当官から直接聞いたことをベースにした筆者の想定例です。)
実は、このような自由診療は、ドイツでも許容されています。
(注)日本とドイツ以外のいわゆる先進国では、ほぼ例外なく法律で禁止されています。なぜそうなっているかについては、こちら↓を参照してから考えてみて下さい。王の毒殺と関係があります。
→「医薬分業とは」
ということは、日本とドイツでは、国の許可なく、未承認医薬品をヒトに投与することが可能だということです。
しかも、元々マウスで効かないヒト用がん免疫療法薬を、懊悩呻吟しながらモデルマウスで試験し、効くという結論(POC*)を無理やり導き出す必要はない、ということにもなります。
. * 前回のトピックス(2022.12.08付)
. 「自由診療によるがん免疫療法は臨床研究の起点になっています ~その1~」
. の中にある、平成31年3月8日に出た「がん免疫療法開発のガイダンス」部分を参照。
もちろんこのような自由診療には、「医の倫理」という重大な問題点をクリアーしておかなければなりません。
それに最も参考になるのが、ヘルシンキ宣言です。
特にその第37条は、「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」として重要で、新規の臨床試験ではヘルシンキ宣言に違反していないことが必ず問われます。
ヘルシンキ宣言第37条では、
———-
個々の患者の処置において証明された治療が存在しないかまたはその他の既知の治療が有効でなかった場合、患者または法的代理人からのインフォームド・コンセントがあり、専門家の助言を求めたうえ、医師の判断において、その治療で生命を救う、健康を回復するまたは苦痛を緩和する望みがあるのであれば、証明されていない治療を実施することができる。
この治療は、引き続き安全性と有効性を評価するために計画された研究の対象とされるべきである。すべての事例において新しい情報は記録され、適切な場合には公表されなければならない。
———-
と、その前半部分にて、
「医師の判断において、………証明されていない治療」ができる
と明記されています。
この点が、本邦では、自由診療の立脚点になっていると言って過言ではないでしょう。
また、ヘルシンキ宣言第37条の後半部分の冒頭にある
「この治療は、引き続き安全性と有効性を評価するために計画された研究の対象とされるべきである。」
とあるように、
“引き続き”
臨床試験(できれば正規の治験)を行うことが推奨されています。
このような「証明されていない治療」を実施したとき、強い副作用が頻発するような場合は、第37条の後半部分により、「安全性が不十分だ」と非難されても仕方がないでしょう。
しかし、もし、
「安全性は十分だったが、有効性はまだ未確立だ」というような場合は、
自由診療をコツコツと積み重ね、有効症例を拾い出して整理してみれば、
「多くの患者さんにおいて有効性がある」、
と一般化できそうか否かが推定できるようになります。
すなわち、自由診療の次の段階として、
「有効性を評価するために計画された研究」に進むことができるようになるのです。
これが、標題の、
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自由診療によるがん免疫療法は臨床研究の起点になっています
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ということです。
では、当社の自家がんワクチン療法において、そのような具体例は実際にあるのかを見てみましょう。
次回の、セルメディシンニュース No.523(2022.12.21発信予定)、
自由診療によるがん免疫療法は臨床研究の起点になっています ~その3~
をお楽しみに!!
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