ご存知の方も多いと思いますが、脳腫瘍の中でも、グレードIVの膠芽腫という種類は、
・初めての手術では全部とり切れず、必ず残存するため、ほとんどの患者さんで再発する。
再発したら、
・放射線も、抗がん剤も効かない。
・ウイルス療法(G47Δ)が保険診療で使用できるが、受診のためのハードルが高く簡単には受診できない。
・再発して、再度入院したら、ほとんど退院することはない。
ということが知られている“最悪中の最悪のがん”です。
この度、筑波大・脳神経外科から、初発の膠芽腫で手術後の自家がんワクチン療法について、条件がそろ
えば効果の有無が予測できるという論文が出ました(Ref. 1)。
*自家がんワクチンの投与を受けた方のうちでは、
・1) 手術で、MRI画像上では膠芽腫が、
. 全部摘出された方 対 全部は摘出できなかった方
では、
. 全生存期間中央値が、36.9ヶ月 対 16.5ヶ月 (p=0.005)
・2) 膠芽腫の病理組織標本で、p53分子の免疫染色で染まる細胞の割合が、
. 10%未満(陰性と定義)の方 対 10%以上(陽性と定義)の方
の間では、
. 全生存期間中央値が、65.6ヶ月 対 20.2ヶ月 (p=0.007)
でした。
*自家がんワクチンの投与を受けなかった方々では、これら1)、2)の因子は予後に影響しませんでした。
この結果から、
・手術で、MRI画像上で膠芽腫を全部摘出、
・その膠芽腫がp53の免疫染色性でみて陰性、
ならば、
自家がんワクチン療法は有効となる、
と予測できます。
従来より、“最悪中の最悪のがん”として太刀打ちできなかった膠芽腫でも、条件がそろえば、自家がんワクチン療法を追加することにより、長生きしていただけそうだ、という光明が見えてきたのです。
Reference
1. Erika Yamada, Eiichi ishikawa, Tsubasa Miyazaki, Shunichiro Miki, Narushi Sugii, Hidehiro Kohzuki, Takao Tsurubuchi, Noriaki Sakamoto, Shinya Watanabe, Masahide Matsuda.
P53-negative status and gross total resection as predictive factors for autologous tumor vaccine treatment in newly diagnosed glioblastoma patients.
Neuro Oncol Adv, Volume 5, Issue 1, January-December 2023, vdad079, https://doi.org/10.1093/noajnl/vdad079
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