がん免疫サイクルに新たなサイクルが追加された、なるほどそうだったのか 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

トピックス

がん免疫サイクルに新たなサイクルが追加された、なるほどそうだったのか

最新の学会から 

 基礎医学を学ぶ医学生にとってなじみのある雑誌に羊土社の「実験医学」誌があります。

 今月(2024年6月)発行の増刊号(Vol. 42, No. 10, 2024)は、
   「良い炎症・悪い炎症から捉え直す がんと免疫 」
という全体タイトルの下で、25項目ものミニ総説が展開されています。

 その中の一つ、
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第3章 早期治療介入、予防に向けた研究・技術開発 6. がんに伴い引き起こされる炎症の種類と治療への応用      - 各務 博 –
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の中に、

   「図3 Up-datedがん免疫サイクル

が提示されています。

(医学生向けですので、以下は少々難しいかもしれませんが、お読みいただければ、世界最先端のがん治療法が、もはや、強烈な副作用がある低分子抗がん剤による化学療法などではなく、
   「がん免疫療法」にシフトしている
ことをご理解いただけると思います。)

 上述の図3は、世界的に有名になったChenとMellmanによる
   “がん免疫サイクル”の図(Ref. 1)
の、Mellman自身による改良版の図(Ref. 2)を和訳して紹介したものです。

 そこでは、オリジナルの“がん免疫サイクル”の図に、新しく“Tpex”という“脇道サイクル”が追加されています。

 (Tpexは tertiary lymphoid precursor exhausted T cell の略語です。
   直訳すれば、 「3次リンパ球前駆細胞としてのくたびれ切ったT細胞」 となります。)

 がん細胞を殺すキラーT細胞は、当初は盛んにがん細胞を殺していきますが、いつまでも続けられるわけではなく、そのうち疲弊してしまいます。

 疲弊するとアポトーシス(自壊死)を起こすため、数が減少していきますが、敵(がん細胞)がいる間は少しでも増えて、敵を殺し続けていかなければなりません。

 そういう場合に、くたびれ切ったT細胞群の中に、幹細胞のように自己増殖しつつ、殺し屋型のキラーT細胞を作り続ける能力があるメモリー型T細胞が、殺しの現場(がん組織の間質)に出現することが示されました(Ref. 3)。

 これがTpex細胞です。

 血中から流れ込んでくる活性化Tリンパ球を含めて、増えた小塊(3次リンパ節構造)を間質に作ります。また、殺しの現場にキラーT細胞を供給し続けます。

 このルートが、オリジナルの“がん免疫サイクル”の脇道のサイクル(サブサイクル)にあたるため、今般のがん免疫サイクルの更新(up date)となりました。

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 弊社のがん免疫療法「自家がんワクチン療法」では、おおまかですが一般的にがん治療効果が観察されるようになるまで、自家がんワクチン接種開始後、約3ヶ月かかります。
 
 自家がんワクチンで惹起されるがん免疫反応は、接種開始後、約2週間で成立していますが、(これは遅延型アレルギー反応という皮膚反応でわかります)、がん治療効果がでてくるのに、なぜ3ヶ月もかかるのか、従来は説明できていませんでした。

 しかし、Tpexサブサイクルががん組織の現場で稼働しているとすれば、
「増えたキラーT細胞は、がんの現場でがん細胞を殺しては疲弊して減り、また増えて殺しては疲弊して減り、増えては減り、増えては減りを延々と繰り返している」
と考えられます。

 そのため、治療効果として現れてくるには、2週間ではとても足りずに時間がかかる、なるほどそうだったのか、というわけです。

 もし、この間に、キラーT細胞よりも早く増えるがん細胞がいたならば、あるいは、キラーT細胞よりもはるかに多い莫大な数のがん細胞がいたならば、さすがに「自家がんワクチン療法」でもがん治療は困難となります。

 やはり、ゆっくり増えるタイプのがん(毒性の強い抗がん剤が効かないタイプです)や、もともとがん組織が小さいもの(がん手術後でも採り切れずに潜在している微小がん)が、自家がんワクチン療法の恰好のターゲットとなるのです。

References

1. Chen DS, and Mellman I. Oncology Meets Immunology: The Cancer-Immunity Cycle. Immunity 39, 1-10, 2013.
2. Mellman I, Chen DS, Powles T, Turley SJ. The cancer-immunity cycle: Indication, genotype, and immunotype. Immunity 56:2188-2205, 2023.
3. Gebhardt T, SL Park, IA Parish. Stem-like exhausted and memory CD8+ T cells in cancer. Nature Reviews Cancer 23: 780-798, 2023.

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全体タイトル:『がんと共存して長生きを』(*)

 (*) タイトルの趣旨は、「がんを小さくするために無理な抗がん剤治療を続けると、強い副
   作用で疲弊してしまい、結局は長生きできなくなるよりも、無理のないやさしい治療を
   続ければ、がんが体内に残っていても長生きできる可能性があります」、ということで
   す。
    実際に、末期がんの方々の延命効果がこのセミナーで提示されます。

   銀座並木通りクリニックでは、この全体タイトルにて、すでに10年以上も定期セミナー
   を開催してきています。

セミナー1:
『あなたのがん専用のがん免疫療法、究極のパーソナルドラッグ・自家がんワクチンについて』

  講師:セルメディシン株式会社
  代表取締役社長 大野 忠夫

セミナー2:『がんと共存・からだにやさしい少量抗がん剤治療について』

  講師:銀座並木通りクリニック
  院長 三好 立

日時:6月29日(土)14:00~16:00(13:45開場)

場所:銀座並木通りクリニック
〒104-0061 東京都中央区4-2-2 第1弥生ビル7F
TEL:03-3562-7773

参加費:無料
参加可能者数:10名(要予約・申込み先着順)
お申込み方法:参加ご希望の方は、銀座並木通クリニック TEL:03-3562-7773
 まで直接お電話下さい。

質疑応答:質疑応答のコーナーでは、多くのご質問をいただいています。ご遠慮なくどうぞ。

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