ここ2~3回、弊社が毎月講演している銀座セミナーで、
セミナー1:『あなたのがん専用のがん免疫療法、究極のパーソナルドラッグ・自家がんワクチンについて』
の発表後に、参加者から、
“これだけ多数の有効例があって、しっかりした学術論文も沢山あるのに、何故、自家がんワクチンは国に承認されていないんですか?”
という、同じ質問を受けています。
「自家がんワクチンはいつまでも未承認医薬品のままではないか」
という、ベンチャー企業の弊社としては、実に痛いところを突かれているわけですが、これを機会に、お答え申し上げます。
1.自家がんワクチンを国の承認薬として認可してもらうためには、厚労省の下部機関、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)に登録した正規の臨床試験(治験といいます)で、『確かな有効性と安全性』を証明しなければなりません。
2.治験には、原則として3段階があります。第I相、第II相(早期と後期があります)、第III相の治験です。
3.新薬候補の治験では、この3段階をクリアーして成功裏に終えることができれば、国の認可を得るために、厚労省に「承認申請」ができることになっています。
4.どの国でも、3段階の治験を完遂し上市するには、巨額の費用がかかることがよく知られています。クスリの種類によって大きな違いがありますが、国内では、中央値で55億円かかっているそうです(※)。これは2013年の調査でしたが、2017年のデータでは、もっと高騰していると報告されています(#)。
5. しかも、医薬品の研究開発には10年以上の期間が必要です(#)。
(※)日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 -アンケートによる実態調査-(2013年7月)
(#)医薬品産業の現状と課題(厚労省資料)https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000398096.pdf
弊社は、2001年に設立した創薬ベンチャー企業ですが、この時代でも、製薬企業では、1社当たりの研究開発費:621億円(2004年)とのことでした(#)。
ちなみに、東京駅前の丸の内ビルディング(地上180m、37階建てビル)の建築費がおおよそこの前後かかったそうです。
さすがに、弊社設立当初からこれだけの資金準備ができませんでした。
そのため、2002年より、日本とドイツで許容されている未承認医薬品を用いた自由診療にて、がん患者様のために「自家がんワクチン」を提供して参りました。
それが現在でも続いているのです。
20年間を越えるこの事業で得た若干の利益にプラスして、大学病院と弊社に対する政府からの研究開発費を投入し、現在は、脳腫瘍に対する医師主導型の第III相治験を実施中です。
この治験は、2020年に開始しています。その前に、「第III相治験を開始してもいいでしょうか?」という公式相談をPMDAとしていますが、その時のわずか2時間の相談料が、1000万円、でした。
新薬上市の成功確率は1/25000しかないというのが創薬の世界です。
しかも、臨床開発には莫大な費用と長期間がかかります。そのようなわけで、気軽に「治験をやれば良い」というわけにはいかないことを、読者の皆様にご理解いただければ、たいへん有難く存じます。