驚きの話題:第20回がんワクチン療法研究会から 最新のがん免疫療法に関するトピックスをご紹介します。

トピックス

驚きの話題:第20回がんワクチン療法研究会から

最新の学会から 

――――――【キーポイント】――――――

 自家がんワクチン療法でわかった、従来の常識にはないがん免疫反応があるようだ、との驚きの報告が3題もありました。

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 がん免疫療法については、オプジーボやキイトルーダといった免疫チェックポイント阻害剤が市販されてから、本邦のみならず、世界的にも非常に盛り上がっています。

 それに加えて、免疫チェックポイント阻害剤以外のがん免疫療法の研究開発も流行中です。

 このような時代の流れの中、2004年11月22日から、ほぼ毎年1回、小人数で開催されてきた研究会が今年もありました。

  「第20回がんワクチン療法研究会学術集会」

   会場:ステーションコンファレンス東京(東京駅八重洲北口の隣のビル)

 筆者が驚いた話題が提供された演題が、今年は3題もありました。


(1) 因島医師会病院外科の倉西文仁先生は、治療にあたった乳がん患者788例のうち、自家がんワクチン受診者169例を調べ、手術後に標準治療の抗がん剤を使う化学療法を受けた方では、自家がんワクチンを接種しても、がん免疫反応の指標の一つ、

  遅延型細胞性免疫反応(DTH-2)
(注射部位の皮膚が赤い円形の発赤を示す反応で、体内にキラー細胞ができているという証拠)

がほとんどの方で起こらない、しかし、化学療法を終了してから6ヶ月ほど経つと、DTH-2反応がみられるようになる、とのことでした。

 これは驚きです。

 従来の常識は、「強力な抗がん剤でも4週間もたてば体内から一掃されてしまうので、次の抗がん剤治療を行うべきだ」というものでした。

 そのため、現在でも、1回抗がん剤を点滴投与したら、2~4週間は間を空けて、次の点滴投与をするのが良いとされています。

 ただし、投与の前に毎回血液検査を行い、抗がん剤の作用で一時的に白血球が激減していた場合でも、回復していることを確認した上で、次の投与を行うことになっています。

 つまり、強力な化学療法を行っても、4週間もすれば、多くの方では白血球の製造元である骨髄もダメージから回復します、というのが臨床現場では常識になっているのです。

 しかし、倉西先生の発表では、

  「4週間どころか実は半年もかかりますよ。」

ということでしたから、やはり乳がんの標準治療で使用される抗がん剤の副作用とは、かなり恐ろしいものなのですね。


(2) 東京女子医大脳神経外科の郡山峻一先生は、脳腫瘍のうち、最も悪性度が高いとされている膠芽腫について、従来とはいささか変わった発表をされました。

 手術後に標準治療(放射線治療+テモゾロミド投与)を受けても、一旦再発すると再手術をしても予後不良に終わる(死亡する)はずが、自家がんワクチン療法の受診者には、再発後に再手術をすると、膠芽腫の再々発・悪化がピタリと止まる症例がいる、というのです。

 これは、やはり驚きでした。再発後に再手術してももう後はない、というのが「最悪中の最悪のがん」と言われる膠芽腫の常識だからです。

 いったいどんな作用が自家がんワクチンには隠されているのでしょうか?


(3) 筑波大学脳神経外科の芥川和樹先生は、膠芽腫に対して、自家がんワクチン療法後の予後予測因子がないかを遺伝子解析から引き出し、免疫染色法のデータで確認した結果を発表されました。

 「切除した膠芽腫が、p53(-)/PIK3R2(low)という特殊な状態にある患者さんでは、他の普通の状態にある膠芽腫の患者さんに比べて、自家がんワクチン療法により明らかに長生きしている」そうです(論文は執筆中)。

 「最悪中の最悪のがん」である膠芽腫ですから、遺伝子解析から分ってくるのは、予後を悪化させる暴れ者の遺伝子の発現だろうと、筆者は常識的に考えていたのですが、長生きさせるという逆の効果を示す遺伝子発現がわかったというのが、一種の驚きでした。

 芥川先生は、若手研究者に対するこの研究会の賞、「堀智勝賞」を受賞されましたので、筆者の他にもいささか驚かれた先生方がおられたことと思います。


 この研究会は、来年もあります。

  「第21回がんワクチン療法研究会学術集会」

   会場:ステーションコンファレンス東京(東京駅八重洲北口の隣のビル)
   時期:2025年11月(日程調整中)

 研究会のお知らせは、
   http://www.ascavath.org/index.html

に掲載されますので、ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
少人数のせいか毎回の討論にも面白さがあります。

注:弊社は病院やクリニックではなくバイオ企業であるため、症例報告や論文内容のWeb掲載は許容されています。

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